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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 今週公開『マッドマックス』!
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.326

あの伝説の“暴走狂人”が30年ぶりに帰ってきた!! 破壊神話『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

madmax_601101.jpgトム・ハーディ主演による『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。CGは極控えめに、生身のゴツゴツした戦い&カークラッシュが繰り広げられる。

 ジョージ・ミラー監督の『マッドマックス2』(81)を初めて観たときは衝撃的だった。シリーズ第1作『マッドマックス』(79)もカーアクション映画として充分すぎるほど刺激的だったが、製作予算が10倍に増えた『マッドマックス2』は文明滅亡後の荒廃した世界を舞台に、それまで観たことのなかった壮絶なSFアクション大作へと大進化を遂げていた。法律もモラルも存在しなくなった近未来のディストピアを描いた作品として、永井豪が「週刊少年マガジン」「月刊少年マガジン」で1973年~78年に連載したコミック『バイオレンスジャック』がすでに存在したが、永井豪のあの狂気と破壊の世界が実写化されたことへの驚きがあった。主人公マックスが救世主として崇められる『マッドマックス/サンダードーム』(85)でメル・ギブソン主演三部作は完結することになるが、まさか30年ぶりに『マッドマックス』の新作に会えるとは! 「どうせ、前シリーズは越えられないだろう」とタカを括っていたところ、トム・ハーディ主演『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に再び衝撃を喰らうはめになった。

 『マッドマックス』シリーズは終末戦争を生き残った人々が水や食料を奪い合う無法の世界だが、そこには不思議な解放感も感じられる。車検まったく無視の改造車やモヒカンヘアの裸のバイカーたちが自分たちの欲望に身を任せ、果てしない荒野を爆走している。『マッドマックス2』に登場した悪の首領・ヒューマンガスはホッケーマスクで顔を隠しているが、マッチョバディにSMっぽいボンテージファッションをまとっている。ヒューマンガスの腹心・赤モヒカンのウェズはバイクの後ろに美形のボーイフレンドを乗せて、いつもラブラブだ。彼らは自分の性癖をまるで隠そうとしない。『マッドマックス』の世界の住人たちは資源がないながらも自由を謳歌していた。永井豪の『バイオレンスジャック』も暴力がはびこる世界を描きながら、文明を失ったことで逆に逞馬竜をはじめとする登場キャラクターたちが目を輝かせていく姿が魅力的だった。永井豪がコミックの世界でイマジネーションを奔放に炸裂させたように、オーストラリア大陸で生まれ育ったジョージ・ミラー監督も自身の映像的イマジネーションを『マッドマックス』の荒野に解き放ってみせた。我々観客はそのイマジネーションの洪水を浴びることが堪らない快感だった。そして30年という歳月を経ても、ジョージ・ミラー監督のイマジネーションはまったく色褪せていなかった。というか、さらに凄いことになっているではないか。

 『—怒りのデス・ロード』の内容をひどく乱暴に言ってしまうなら、すべてを失って虚無状態に陥っていたひとりの男が戦いの中で自尊心を取り戻すという物語だ。元警察官のマックス(トム・ハーディ)は愛車インターセプターに乗って荒野をさすらっていたが、武装集団ウォーボーイズに捕獲されてしまう。麿赤兒のように全身白塗りの不気味なウォーボーイズたちは、この土地の資源を独占するイモータン・ジョー(ヒュー・キース=バーン)に仕えていた。警察官という職と家族を失い、さらに愛車と自由まで奪われてしまうマックス。だが健康体であることから、寿命が短いウォーボーイズたちの「輸血袋」としてイモータン・ジョーの砦で辛うじて生存を許される。そんな折、イモータン・ジョーの片腕だった女傑フュリオサ(シャーリーズ・セロン)が、ジョーの性奴隷となっていた若い5人の女性たちをウォータンクに乗せて脱走。フュリオサ追撃隊に、輸血袋であるマックスも連れ出される。『マッドマックス2』の影の主人公タンクローリーをさらにパワーアップさせたウォータンクをめぐり、映画史上空前のカーチェイスが勃発する!!

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