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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.323

不幸のスパイラル少年と究極ニートオヤジが激突!?『天才バカヴォン 蘇るフランダースの犬』

vakabon052101.jpg“幻の国”満州国で生まれ育った赤塚不二夫の分身キャラクターであるバカボンのパパ。劇場版アニメの主人公として、ポリティカルサスペンスに挑む。

 号泣アニメとして日本人の心に刻まれている『フランダースの犬』とギャグ漫画の金字塔である『天才バカボン』をコラボレートさせてしまった無茶ぶり劇場アニメ『天才バカヴォン 蘇るフランダースの犬』。両作品のファンを挑発するかのような、こんな非常識な企画を考えたのはフラッシュアニメ『秘密結社 鷹の爪』シリーズで知られるFROGMANだ。かつて「東映まんがまつり」にて『マジンガーZ対デビルマン』(73)なる劇場版ならではの珍コラボが存在したが、マジンガーZもデビルマンも永井豪原作で、東映アニメのキャラクターだったから実現可能だった。『母をたずねて三千里』や『赤毛のアン』と並ぶ「世界名作劇場」の人気作と、アナーキーな笑いを満載した赤塚不二夫ワールドが融合できるのか? なかば怖いもの見たさで、劇場に足を運ぶことになる。 

 赤塚不二夫生誕80周年企画として始まった『天才バカヴォン』。脚本&監督をつとめることになったFROGMANは、バカボンのパパの競演相手としてハリウッドの誇る超大物キャラクターであるエイリアンやプレデターに出演オファーしたそうだが、あえなくハリウッド側から却下されてしまった。バカボンのパパの競演相手として、もっとありえないキャラはいないのか。そこでFROGMANが思い浮かんだのが、「パトラッシュ……、疲れたろう。僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ……」という言葉を残して非業の死を遂げた少年ネロと忠犬パトラッシュだった。折しも『フランダースの犬』もアニメ放映から40年というメモリアルイヤー。日本アニメーションがOKし、今回の異色対決が実現した。モハメド・アリとアントニオ猪木の異種格闘技戦のように展開がまるで読めない。

 1967年から「少年マガジン」にて連載が始まった『天才バカボン』には謎が多い。バカボンの名前の由来はバカボンド(放浪者)から、いやサンスクリット語のバガボン(世界でもっとも尊い人)からなど諸説があるが、どれが本当なのか。バカボンのパパは働いていないが、バカボン一家はどうやって食べているのか。そもそもバカボンのパパの鼻の下に生えているのは長い鼻毛なのか、それともバーコード状のチョビ髭なのか。多くの謎を抱えながらもバカボンのパパ(声:FROGMAN)は息子のバカボン(声:犬山イヌコ)ら家族と共に陽気に暮らしている。だが、バカボン家の謎に執拗にこだわる人間がいた。悪の秘密結社インテリペリの総帥ダンテ(声:村井國夫)は、森羅万象のすべてを予測できる万能コンピューター・オメガを完成させるが、オメガを起動させるためにはこの世界のすべてのデータを入力しなくてはならない。そのためには『天才バカボン』最大の謎である“バカボンのパパの本名”を知る必要があった。そこでダンテがバカボン家への秘密工作員として地獄から召還したのがネロとパトラッシュ。絵画コンクールで一等賞になって画家になるという夢を叶えることなくルーベンスの名画の前で凍死したネロ(声:瀧本美織)とパトラッシュ(声:FROGMANの愛犬)は、地獄の炎に焼かれながら人間社会への復讐のチャンスを待っていたのだった。

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