カメオ出演にも注目! 鬼才テリー・ギリアムが描く、近未来SF『ゼロの未来』
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今週取り上げる最新映画は、鬼才テリー・ギリアム監督による待望の近未来SFドラマと、リーアム・ニーソン主演のサスペンスアクション。魅力あふれる世界観やスピーディーな活劇はもちろん、名優たちが演じるキャラクターの生き様も味わい深い2作品だ(いずれも5月16日公開)。
『ゼロの未来』は、『未来世紀ブラジル』(1986年)のテリー・ギリアム監督が、『イングロリアス・バスターズ』(09年)のクリストフ・ワルツ主演で描いた近未来SF。世界をコンピューターで支配する大企業に勤める天才プログラマーのコーエンは、人生の意味を教えてくれる電話がかかってくるのを待つため、経営者に在宅勤務を願い出る。住居兼用の荒廃した教会で、謎めいた「ゼロの定理」の解読を任されたコーエンだったが、待ち望む電話は鳴らず、仕事にも行き詰まってコンピューターを壊してしまう。そんなとき、パーティーで出会った魅力的な女性ベインズリーと、経営者の息子ボブが相次いで教会に現れ、コーエンの孤独な生活に変化が訪れる。
伝説的なコメディ集団モンティ・パイソンのメンバーとして開花させたギリアムのシニカルなユーモアは、長編監督作としては『Dr.パルナサスの鏡』(10年)以来4年ぶりとなる本作でも健在。初来日時にカルチャーショックを受けたという秋葉原の騒音と映像のカオスぶりを未来都市の風景に反映させたほか、歩く主人公をしつこく追いかける動画広告、ネット経由のバーチャルデートなどもコミカルに描き、ハイテク依存を強める現代社会の行く末にブラックな笑いで警鐘を鳴らす。アカデミー助演男優賞を2度受賞したワルツが、悩める天才の葛藤と精神的成長を味わい深い演技で体現。ベインズリー役のフランス人女優メラニー・ティエリーも、聖俗併せ持つピュアでセクシーな魅力が混沌とした舞台に映える。カメオ出演ながらマット・デイモン、ティルダ・スウィントンも印象的なキャラクターで世界観の構築に貢献した。
『ラン・オールナイト』(R15+指定)は、『アンノウン』(11年)、『フライト・ゲーム』(14年)に続き、主演のリーアム・ニーソンとジャウム・コレット=セラ監督が3度目のタッグを組んだクライムアクション。ニューヨークを牛耳るマフィアの殺し屋ジミーは、家族をかえりみず、息子マイクとも疎遠になっていた。だがある夜、命を狙われたマイクを救うため、マフィアのボスで30年来の親友でもあるショーンの息子を射殺してしまう。ジミーとマイクは、復讐に燃えるショーンの組織と汚職警官らから追われる身となり、逃走劇を繰り広げる。
元CIA工作員に扮した『96時間』シリーズの大ヒット以来、すっかり「無敵の中年オヤジ」キャラが定着したニーソン。セラ監督とのコラボでも、前2作と同様、絶体絶命のピンチを巧みに切り抜け、迫り来る敵をバッタバッタと倒すノンストップアクションに体を張った。カーチェイスと銃撃戦の派手さだけでなく、ジミーとマイク、エド・ハリス扮するショーンとその息子、2組の親子の愛憎も効果的に描かれ、裏社会に生きる男たちの悲哀がしみる。ニーソンとハリスの名優同士による、西部劇の決闘のようなラストの対決まで、刺激的な場面の連続に目が離せない。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『ゼロの未来』作品情報
<http://eiga.com/movie/81428/>
『ラン・オールナイト』作品情報
<http://eiga.com/movie/79809/>
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