平均年齢72歳のベテラン俳優陣が大暴れ!『龍三と七人の子分たち』
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今週取り上げる最新映画は、日本のみならず世界から高く評価される2人の天才監督、北野武と押井守が放つ話題作2本。コメディと近未来SFアクション、作風は大きく異なるが、虚構の物語を通じて現代の日本のあり方を問いかける姿勢は共通している。
『龍三と七人の子分たち』(4月25日公開)は、北野武監督が脚本も手がけ、元ヤクザの高齢者たちが巻き起こす騒動をコミカルに描いた作品。70歳の龍三(藤竜也)はかつてヤクザの組長だったが、引退した現在は息子夫婦の家に身を寄せ、肩身の狭い思いで暮らしていた。ある日、オレオレ詐欺に引っかかった龍三は、詐欺や悪徳訪問販売で稼ぐ組織を成敗しようと、昔の仲間を呼び寄せて決起する。
北野組初参加の藤をはじめ、近藤正臣、中尾彬、小野寺昭ら主要キャスト8人のベテラン俳優陣は平均年齢72歳。任侠心こそ昔のままだが体は老い、世間ズレした「やんちゃジジイ」たちをユーモラスに演じた。露店の並ぶ狭い商店街を路線バスが暴走する迫力満点のシーンでも、実際にバスに乗り込み、楽しみながらロケに臨んだ様子が伝わってくる。オレオレ詐欺や食品偽装といった現代社会の問題も取り込みつつ、監督が描き続けてきたヤクザの義理人情と抗争を、喜劇のスタイルで再構築。バイオレンスを笑いで包む、今までにない北野映画となった。
『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』(5月1日公開)は、人気アニメ『機動警察パトレイバー』を実写化したドラマ『THE NEXT GENERATION パトレイバー』の長編劇場版。レイバーと呼ばれる人間型ロボットが普及した「もう一つの日本」で、お台場のレインボーブリッジが爆破される。この事件は、数日前に陸上自衛隊の演習場から強奪された戦闘ヘリコプター「グレイゴースト」を利用したテロと判明。最新鋭のステルス機能と強力な火器を搭載するグレイゴーストは、警察と公安の部隊、さらには自衛隊の戦闘ヘリをも圧倒する。いまや最後の砦となった警察用レイバーを擁する特車二課の隊員たちは、テロから首都を守るべく、グレイゴーストとの決戦に臨む。
監督・脚本は、同シリーズと四半世紀以上の付き合いになる押井守。漫画・アニメから派生した実写プロジェクトの目玉はなんと言っても、全高8メートルのリアル「パトレイバー」を制作し、実景の中に屹立させたことだろう。アクションシーンではCGモデルが描画されるが、実機とCGモデルの質感を統一し、重厚な存在感とスピーディーな躍動感を見事に両立させた。真野恵里菜、福士誠治ら若手キャストの中では、太田莉菜が軽快な身のこなしと目力で特に印象的。押井監督がこだわる世界観は、シリーズの過去作を未見の人には十分に理解できない部分もあるが、本作を入口に歴代の傑作をたどる楽しみ方もアリだろう。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『龍三と七人の子分たち』作品情報
<http://eiga.com/movie/81333/>
『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』作品情報
<http://eiga.com/movie/79683/>
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