『ラブプラス』内田明理Pに聞く「コンシューマーゲームはなぜ、ソーシャルゲームに敗北したのか」
#インタビュー
テレビゲーム黎明期より、日本のゲーム業界を盛り上げ続けてきたコナミ。同社で『ときめきメモリアル Girl’s Side』『ラブプラス』『ランブルローズ』『とんがりボウシと魔法の365にち』など 、老若男女問わずゲームファンを魅了する中毒性高めなゲームを多数手掛けてきたゲームクリエイター・内田明理氏が3月16日、Twitter上で退社を発表した。
同社の看板タイトルを多数手掛けた名物クリエイターの退社に、多くのゲームファンは、さぞ驚いたことだろう。そこで、今回は内田氏に今後の活動の展望や、フリーランスになった今だからこそ話せる「コンシューマーゲーム業界への意見」を聞いてみた!
――退社のニュースには非常に驚きました。しかも、その報告が久々のツイートという。
内田明理氏(以下、内田) 退社報告以前の最後のツイートが、手掛けたタイトルの10周年に関するつぶやきだったので、2012年以来のツイートでしたね。当時は会社員という立場もあり、あまりつぶやかないようにしていたのですが、今はお客様とじかにやりとりできるのですごく楽しいです。
──ファンとのやりとりを見ていると、そういう人たちと一緒に何かを作ろうとしているのかな、というふうにも見えるのですが……。
内田 まさに、そういうことをやりたいんですよ。いまやサブカル系のコンテンツがメジャーシーンに躍り出ることが頻繁にあって、メディア発信の「右へ倣え」で流行りものが決まる時代は終わってしまいました。特に若い方の趣味が多様化し、その中で突出したものがとあるきっかけでメディアに紹介され、世の中に広まる。ここ数年、そういう動きが以前にも増して活発になってきています。そのコンテンツは大企業がやっていようが、個人制作だろうが、あるいはソーシャル的にたまたま出来上がったものだろうが、関係ありません。それが本当に面白いですよね。
例えば、Google PlayやApp Storeの無料アプリランキングでは、個人がシャレで作ったようなものが普通にランクインしている一方で、大企業が作ったものが埋もれている。大企業だと会社的にやる意味をなかなか見いだせないとしても、エンタテインメントとしてはユーザーに求められてもいるという現状があります。僕も“プロのアイデアマン”を自称していますので(笑)、今後は小回りの利く立場でいろいろとやってみたいと思います。
――具体的には、どんなことをやろうとしているんですか?
内田 まずひとつは、お客さんと一緒に騒ぎながらコンテンツを作り上げていく、ということをやってみたいですね。あとは、ゲームという形かはわかりませんが、デジタルキャラクターのエンタテインメントを、新たなモデルで作り上げてみたいと思います。
結局、デジタルコンテンツは劣化しないので、何を作っても宿命的に無料になるんです。それどころか、過去のアナログコンテンツもデジタル化されるので。今の子どもたちが、YouTubeで昔の『ウルトラマン』や『仮面ライダー』などの特撮モノを見ている時代です。新しいものを作っても、過去のレガシーと競合しなきゃいけない。これは、ゲームでも同じことです。しかも、過去にペイしたコンテンツの多くは無料に近い形で供給されるでしょう。そう考えると、デジタルコンテンツそのもので対価をいただくビジネスは、相当難しいはずです。
音楽業界はとっくにそうなっていて、パッケージでもDLでも、音源データは中高年にしか売れない。その一方で、ライブとかフェスは年々市場が拡大していますよね。つまりデータにお金を払うのは嫌だけど、「経験」に価値を感じている方が増えているということだと思うんです。僕は経験自体にお金を使ってもらうことをデジタルコンテンツでやってみたいです。ただ、アーケード以外であまり先例がないので、説明が難しくて(笑)。
──お金を持っている世代の人ほど、そういう感覚は理解しがたいのかもしれませんね。
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