中国農村部の悪しき風習“ベトナム嫁買い”が生んだ、人身売買の闇「実の子を売り物にするケースも……」
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3月2日、広東省潮州市郊外の饒平県で、30代の男性とその母親が惨殺された。殺人事件自体はさほど珍しくない中国だが、この一件は中国にはびこる悪しき風習を浮き彫りにした。
犯人として逮捕されたのは、ベトナムから中国に嫁いだ21歳の妻と、共犯の3人のベトナム人男性だった。彼らは、男性と妻がもうけた、生後3カ月に満たない双子の息子たちを売り飛ばす予定で、すでに一人あたり約125万円で、それぞれ中国人の買い手が付いていた。
この妻自身、数年前に、約55万円で被害者の家に「売られて」やって来たという。嫁不足に悩む中国の農村部では、妻をめとることができない息子に父親が嫁を買い与える習慣があるのだ。
中国事情に詳しいフリーライターの吉井透氏は、中国人のベトナムからの嫁買いについてこう話す。
「比較的ベトナムに近い中国南部の農村では、仲介業者に支払う紹介料は95万円程度。業者は『ベトナム嫁買いツアー』を頻繁に開催しており、男性は現地に足を運んで花嫁候補を探すんです。妻となる女性の家族には、結納金として60~100万円程度を納める。現地への渡航費用や滞在費を含めれば200万円以上が必要だが、それでも中国人女性との結婚に比べれば費用は安い」
一方、地元警察によると、中国に売られて来るベトナム人妻たちは夫と一定期間を過ごした後、姿を消し、新たな嫁ぎ先を見つけてさらなる利益を得ようとするケースが多い。さらに、自らの子どもを連れ出し、「売り物」にすることがあるという。
今回の事件でも、ベトナム人妻は自ら自由の身になるためか、さらなる儲けを得るために犯行に及んだ可能性が高い。
ベトナム側の資料では、1998~2010年までの間に結婚で海外へ移民したベトナム人女性は29万4,000人余りで、移民先は50カ国に及ぶが、中国や韓国が大半を占めている。中国内で正式な婚姻届が出されていない案件も多く、彼女たちの正確な数は把握されていない。家族にいい生活をさせようと、自ら望んでやって来た者もいれば、だまされて連れて来られる者もいる。
殺人に至ってしまったことは償うべきだが、国境を越えて身売りしなければならなかった彼女もまた、格差や人権問題の被害者だったのかもしれない。
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