「なりたい職業No.1」でも、5人に1人が辞めたい? 韓国で“無気力教師”増加中のワケ
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韓国では2月に卒業シーズンを終え、3月からは新学期を迎えているが、韓国職業能力開発院は最近、18万402人の小中高生を対象にした進路希望調査を発表。最も人気の高かった職業が「教師」ということが明らかになった。
将来の進路として教師を選んだのは、高校生が男子9.0%、女子15.6%で、中学生が男子8.9%、女子19.4%。女子中学生は、およそ5人に1人が教師への進路を希望していることになる。
この結果は、日本と比べても高い数字だ。「ベネッセ教育研究開発センター」が発表した 「第2回子ども生活実態基本調査(2009年)」を見ると、教師志望の割合は、高校生が男子4.7%、女子5.1%。また、中学生が男子1.6%、女子1.8%と、韓国ほど圧倒的に支持されているわけではない。
では、なぜ韓国で教師の人気が高いのだろうか?
もともと韓国では教員の給与水準が民間企業に比べて低かったのだが、1999年に政府は同水準にまで引き上げる政策を実施し、待遇改善に力を注いだ。その結果、2013年に英国の国際教育機関バーキーGEMS財団が発表した「教師地位指数」によると、韓国教員の平均年俸は4万3,874ドル(約532万円)と、日本の4万3,775ドル(531万円)とほぼ同じで、世界でもトップクラスの水準にまで成長を果たした。
また、雇用形態は日本と同じく終身雇用であり、その身分は62歳の定年まで保障されていることが、女生徒の人気を集める理由でもある。韓国では就職内定率の男女比はほとんど差がないが、再就職となると女性は男性の半分以下であるため、一般企業に比べて“キャリア断絶”におびえることがないのだ。
しかし、韓国で実際に教師になった人のうち、5人に1人は「後悔した」という声を上げていることもわかった。前出の「教師地位指数」によると、教師を尊敬していると答えた生徒はわずか11%しかおらず、世界でも最低水準なのだ。
韓国の教職員は、学校同士のメンツの張り合いや、何か問題が起これば訴訟も辞さないモンスターペアレンツを相手にする気苦労が絶えない。さらに、極度の学歴社会であるため、生徒個人が塾に通うケースも多く、教師たちは受け持ったクラスの授業速度の足並みをそろえること自体も難しいそうだ。その結果、授業内容の充実よりも、上からの指示をこなすことだけを優先する“無気力教師”たちが増加中にあるという。
生徒たちのイメージや安定的な雇用体系とは反比例して、お世辞にも質の高い教師が多いとはいえない韓国。待遇を考えれば韓国の教職は理想的だが、生涯の仕事にするには、ある程度の割り切りが必要なのかもしれない。
(取材・文=慎虎俊)
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