大幅値上げ→即、税収のために“低価格タバコ”導入……韓国「一貫性なさすぎ」政策に愛煙家困惑中
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韓国の週刊インターネット新聞「日曜新聞」2月23日付の記事によると、韓国の与党であるセヌリ党ユ・スンミン院内代表が、「低所得者と老人のための低価格タバコ導入」を検討していると明かした。日本でも、禁煙、分煙など喫煙者の肩身が狭くなってきているなか、なんともうらやましく思える法案だが、韓国ではこの発表が物議を醸しているという。
“低価格タバコ”法案の目的は、低所得者をはじめとする消費者の経済的負担の軽減。日本でもタバコの価格が上がっていることを考えると、喫煙者にはなんともありがたい法案のようだが、これが大きな矛盾を生んでしまっているというのだ。
「国民の負担軽減」とだけ聞くと甘美な響きだが、韓国では2000年代に入ってからは“禁煙ムード”一色で、今年もタバコの価格を2,500ウォン(約250円)から4,500ウォン(約450円)に引き上げたばかり。“国民の健康増進”という大義名分をうたったものの、2カ月もたたずして、“値上げ政策”を自ら覆してしまったわけだ。韓国では反喫煙法により、2006年から喫煙エリアが制限され、今年からは「大韓民国健康増進法」が改正、全飲食店で禁煙が実施されている。
ここまで締め付けを強化したのは、喫煙率の高い韓国において、喫煙が原因とされる病気の医療費や、喪失された労働時間による経済的損失が10兆ウォン(約1兆円)に上るといわれているからだという。
「国民の健康増進」と「国民の負担軽減」。双方ともに国が果たすべき任務で、支持率を意識した政策だが、今回の“低価格タバコ”法案はそのどちらでもなく、“税収”という二文字が見え隠れする。韓国においてタバコは、高麗人参とともに長きにわたり専売制が適用されて“国の事業”として展開されてきたが、02年に民営化。現在は、日本たばこ産業(JT)に相当する株式会社KT&Gが産業を担っている。韓国政府にとって民営化のメリットの一つに課税があるが、値上げを実施した今年1月は、30年ぶりに外国産タバコにシェアを奪われる結果に。まさに、あちらを立てればこちらが立たぬ、という状態なのだ。
“低価格タバコ”法案は今、“せこい増税”呼ばわりされている。国民の反感の中で、セヌリ党議員も「悪い政策より悪いのは、一貫性のない政策だ」と非難の声を上げている。軽々しく増税を唱えてしまった韓国の政治家たちは、今ごろ後悔していることだろう。
(取材・文=梅田ナリフミ)
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