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歌舞伎町のラブホに集う“ワケあり”男女の群像劇 染谷将太×前田敦子『さよなら歌舞伎町』

sayonaramain1.jpg(C)2014『さよなら歌舞伎町』製作委員会

 今週取り上げる最新映画は、歓楽街のラブホテルに集う面々の人間模様を描く邦画と、米ポップアート全盛期に起きたゴースト画家騒動を描く洋画の2本。両作品に共通するのは、登場人物たちの隠す秘密が明らかになるかどうかが緊張感を生み、物語の展開を効果的に刺激している点だ。


 『さよなら歌舞伎町』(1月24日公開、R15+指定)は、『ヴァイブレータ』(2003年)の廣木隆一監督、『寄生獣』(14年)の染谷将太主演で描く、大人の群像ドラマ。新宿歌舞伎町のラブホテルで店長を務める徹(染谷)は、同棲相手でミュージシャン志望の沙耶(前田敦子)や、福島に住む家族には自分が一流ホテルマンだと偽っている。徹がいつものように出勤したラブホで、過去の罪を隠す清掃員(南果歩)、韓国人のデリヘル嬢(イ・ウンウ)、家出少女(我妻三輪子)と風俗スカウト(忍成修吾)、警察官の不倫カップル(河井青葉、宮崎吐夢)ら、ワケありの男女の人生が交錯する。

 客と従業員の間の没交渉が基本のラブホテルを舞台に、あえてグランドホテル方式の群像劇を組み立てたオリジナル脚本がユニーク。話題作への出演が相次ぐ染谷、元AKB48の前田、「ニコラ」(新潮社)モデル出身の我妻、韓国人女優のイなど多彩な若手と、大森南朋、田口トモロヲ、村上淳、松重豊ら実力派の中堅によるアンサンブルは、時に軽妙、時に濃密で2時間15分の長尺を飽きさせない。パートナーへの嘘や社会への隠し事で危うく成立しているカップルたちが、秘密の露見を前に決断を迫られる。愛や夢、欲望や虚栄といった、歌舞伎町が象徴するものに別れを告げる、どの登場人物に観客は自分を重ねるだろうか?

 『ビッグ・アイズ』(公開中)は、鬼才ティム・バートン監督が、今から半世紀前の米ポップアート界を揺るがしたゴースト画家の実話を映画化したインディペンデント作品。美大で学んだ絵で生計を立てたいシングルマザーのマーガレット(エイミー・アダムス)は、社交的で自信家のウォルター・キーン(クリストフ・ワルツ)と出会い、ほどなく結婚する。彼女が悲しげな大きな目の子どもを描いた『ビッグ・アイズ』シリーズは、ある夜を境に人気が急上昇。だが、ウォルターは自分の作品だと偽って巧みに売り込み、一躍アート界の寵児となる。内気なマーガレットは夫に言われるままキーン名義で絵を描き続けるが、自宅でのトラブルを機に別居。やがて彼女は、自分を取り戻し作品を守るために、真実を公表することを決意する。

 風変わりなキャラクターと奇想天外な世界観を描くファンタジーやホラー作品の多いバートン監督だが、今回は実話ベースのため至極真っ当な作り。とはいえ、特撮とメイクで俳優の目を大きく見せるシュールなシーンで、「らしさ」も添える。アダムスは本作で、今年のゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)を獲得。ワルツもペテン師まがいの夫を憎々しく熱演し、ヒロインの苦悩と葛藤を見事に引き立てている。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『さよなら歌舞伎町』作品情報
<http://eiga.com/movie/80641/>

『ビッグ・アイズ』作品情報
<http://eiga.com/movie/80081/>

最終更新:2015/01/23 23:00
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