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池袋に中華街、錦糸町にリトルバンコク……東京でアジアを感じる案内本『東京のディープなアジア人街』

61X6UDWO-GL.jpg『東京のディープなアジア人街』(彩図社)

 かつて一大ブームに沸いた韓流の街・新大久保をはじめ、錦糸町のリトルバンコク、高田馬場のリトルヤンゴン、池袋の新中華街、西葛西のリトルデリー、竹ノ塚のリトルマニラなど、東京には母国を離れて暮らすアジアの人々が独自のコミュニティを形成しているエリアが多数存在する。『東京のディープなアジア人街』(彩図社)は、そんな異国情緒漂うディープなエリアを徹底的に紹介する、アジア好きにはたまらない1冊だ。

 著者の河畑悠氏は、学生時代にアジア独特の怪しさや猥雑さの魅力にとりつかれ、バックパッカーとしてアジア全域を放浪した経験を持つ。帰国後、池袋に中華料理を食べに、新大久保に韓国料理を食べに、錦糸町にパクチーを買いにと、あちこち回っているうちに、東京にもアジアが感じられる場所があることに気づく。日本とは言語も風習も異なる在留アジア人は、当然ながら、自分たちの国の食材が欲しくなるし、気兼ねなく訪れられる飲食店、パブやスナックを求める。そして、自然と同郷の人たちが集まり、自国と同じような空気感を形成していく。

 たとえば池袋の中華街。私も、かつて池袋の北口に中華系のお店がたくさんあるらしい……との噂を聞きつけ、探してみたことがあるのだが、ぶらぶらと歩く程度ではさっぱり見つけられず、がっかりして帰った記憶がある。ところが、噂だけではなく、どうやら本当に存在しているようで、中華食品店、美容室、書店にカラオケ、ビリヤード店、マッサージ店、ネイルサロン、ガールズバーなど、生活に必要なものがそろっているという。しかも、日本一有名な横浜の中華街とは違う特徴として、池袋には中国東北部からの留学生が多く集まっていることから、彼らをターゲットにした東北料理店が多いという。中でも特筆すべきが、吉林省の朝鮮族自治州の韓国料理と中華料理をミックスした「延辺料理」なる店の多さで、その代表的なメニューは、クミンをふんだんにまぶした羊の串焼きや犬肉料理というから、なかなか衝撃的である。

 また、錦糸町に存在するというリトルバンコクの章では、ほかの街でもよく見かけるタイ料理店やタイ古式マッサージ店だけではなく、タイ料理教室やタイ語教室、フルーツや野菜で器を作るタイカービングなど、タイに関すること全般を学べる「タイ教育・文化センター(タイテック)」を紹介。そんな場所があったのかとまず驚いたが、その理事長を務め、さらには、タイ食材輸入会社「ピーケーサイアム」代表、タイ料理店「ゲウチャイ」オーナーも務める、1976年に来日した松本ピムチャイさんにインタビューも試みている。なぜ錦糸町だったのか、リトルバンコクが誕生するきっかけなど、“ほー、なるほど!”と納得できる興味深い内容が記されている。
 
 アジアが大好きだけれど、時間やお金がなくてなかなか行くことができない人、かつてバックパッカーだった人、アジアに興味はあるが未経験の人が興奮する内容に仕上がっている。
(文=上浦未来)

●かわはた・ゆう
ライター・編集者。1979年生まれ。学生時代にアジアの魅力にとりつかれ、バックパッカーとしてアジア全域を旅する。大学卒業後、業界紙記者や情報誌の編集などを経験。現在はアジア関連をテーマとするライターとして活動中。好きな場所はタイのバンコク。タイ料理やゲテモノ料理の食べ歩きがライフワーク。

最終更新:2014/12/08 14:54
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