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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.295

あの“アホの坂田”師匠が和製イーストウッドに!? 安藤サクラ主演作『0.5ミリ』で光り輝く名優たち

05mm01.jpg高知ロケが行なわれた『0.5ミリ』。元自動車整備士の茂(坂田利夫)は、さすらいのヘルパー・サワ(安藤サクラ)と束の間の甘い生活を送る。

 映画の普遍的なモチーフのひとつに“疑似家族”ものがある。血の繋がらない人々が様々なトラブルを乗り越えて、ひとつの絆で結ばれていく物語だ。ラブコメ、バディムービー、任侠映画も広い意味での疑似家族ものの一種といえる。絆という言葉は曖昧なので、共通言語と言い換えてもいい。キャスト同士、そしてキャストとスタッフとが、映画という共通言語で結ばれていくのが映画製作である。ゆえに古今東西すべての映画は、キャストやスタッフが監督や主演俳優を中心にひとつのファミリーになっていく過程を追ったドキュメンタリーだと言うことができる。奥田瑛二の長女・安藤桃子監督が妹・安藤サクラを主演にして撮ったロードムービー『0.5ミリ』は、まさに典型的な疑似家族もの。流浪のヘルパーを主人公に、血縁関係や従来の家族制度に囚われることなく新しい家族が生み出されていく様子を3時間16分にわたって描いている。

 主人公・山際サワ(安藤サクラ)はさすらいの介護ヘルパーだ。もともとはちゃんと介護センターに登録していたが、「冥土の土産に」と平田家の寝たきりの昭三おじいちゃん(織本順吉)にひと晩添い寝したことが原因で、介護センターをクビになってしまった。ついでに寮まで追い出されてしまう。職なし、家なし、家族なし、貯金なしのサワは、かくして流しのヘルパーとなる。以後、サワは街を徘徊する寂しそうな老人を見つけては、強引に家に上がり込んで勝手に世話を焼くのだった。押し掛けヘルパー・サワの冒険が始まった。

 老人介護が題材と聞くとシリアスなものを思いがちだが、ロケ地である南国・高知の明るい陽射しと安藤サクラのバイタリティー溢れる行動力が、そんな先入観をバコ~ンッと吹き飛ばしてしまう。そして何よりも安藤サクラと絡むベテラン俳優たちの妙演が実に味わい深い。サワが最初に出会うのは、カラオケボックスをホテル代わりにして夜を明かそうとする康夫ちゃん(井上竜夫)。カラオケボックスの利用方法に不慣れな康夫ちゃんに代わって、サワは受付をちゃちゃっと済ませる。サワと康夫ちゃんはひと晩カラオケボックスで過ごすだけの仲だが、赤の他人同士だからこそ相手をいたわることができる。翌朝、エロジジイでもある康夫ちゃんはサワのお尻を撫でながら、さりげなくサワの手に1万円札を握らせる。そして颯爽と去っていく康夫ちゃん。「おじゃましまんにゃわ〜」「ごめんくらはい」のギャグでおなじみ「よしもと新喜劇」の重鎮・竜じいの軽妙な芝居が旅物語の序盤を軽快に後押しする。

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