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清少納言が紫式部をひっぱたく! 超訳モダン枕草子『砂子のなかより青き草』

51hQ3WX+d3L.jpg『砂子のなかより青き草』(平凡社)

 先日の内閣改造で女性活躍担当相が新設されたが、現在、日本は先進国の中で男女間賃金格差が最も大きい国である。女性の平均賃金は、男性の平均賃金の70%に満たないほどで、驚くべき低い水準だ。欧米では男女間賃金格差が確実に是正されているにもかかわらず、この30年間、日本の男女間賃金格差はほぼ横ばいで、男女の給与待遇は変わっていないのが現状だ。日本の性差は深刻で、根深い問題だといえる。


 現代よりも圧倒的な男社会であった平安時代、男まさりの学問と教養を身に付けていた女性は、何を思って暮らしていたのか――。『砂子のなかより青き草』(平凡社)は、R-18文学賞を受賞した気鋭の女流作家・宮木あや子氏が、清少納言とその身辺を描いた小説だ。夫と離婚した清少納言(なき子)は、一条天皇の皇后・定子に仕える女房という仕事を得て、華やかな宮中の暮らしを草子に記す。原文『枕草子』ではうかがい知ることのできない清少納言の内面を、現代人の視点から巧みに描いている。バツイチの寂しさ、ライバルとの権力争い、イケメン貴族との恋など、特に古典に知識がなくともエンタテインメントとして楽しめる内容となっている。

 なき子は、枕草子原文に描かれているような「春はあけぼの。いとをかし」なんて、ただ季節の移ろいを眺めているだけの女性ではない。「女が学をつけても良いことは何もない」と自嘲しながら、女が役に就ける世の中を待ち望み、自分から男に口づけをせがむ。意志と行動力の備わった現代の女性だ。特に、紫式部の胸ぐらをつかみ、平手打ちをかまし、懐刀を突きつける場面は、コミカルでありながら、鬼気迫るすごみを感じさせる。

 男女雇用機会均等法が成立した80年代、橋本治氏は『桃尻語訳 枕草子』(河出書房新社)で、女子高生の言葉を用いて清少納言を現代に連れてきたが、宮木氏は、現代のアラサー女性を平安京にタイムスリップさせることに、この『砂子のなかより青き草』で成功したといえる。仕事や結婚で悩む女性に、またそんな女性を理解したい男性に手に取ってほしい一冊だ。枕草子のエッセンスは、1000年がたった現代においても“青き”草として、あなたの心にみずみずしく訴えかけるだろう。
(文=平野遼)

最終更新:2014/09/17 21:00
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