他人の不幸は蜜の味? 大富豪ファミリーの転落記 目撃ドキュンUSA『クイーン・オブ・ベルサイユ』
#映画 #パンドラ映画館
人間が抱く下世話な好奇心を、ここまで心地よく刺激する映画はそうそうないだろう。他人の不幸は蜜の味というが、その言葉に従えば“全米がその甘さに舌なめずりした!”といったところか。『クイーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』は米国で2012年に公開され、興収2億円を越える大ヒットを記録したドキュメンタリー映画だ。タイムシェアビジネスでボロ儲けしたデヴィッド・シーゲルとその巨乳妻ジャッキーは総工費100億円を投じた現代のベルサイユ宮殿をフロリダに建て始めるも、リーマンショックのあおりで大借金生活に転落。図らずもカメラは、シーゲル一家が幸福の絶頂から奈落へと転がり落ちていく一部始終を捉えていたのだ。
『クイーン・オブ・ベルサイユ』は日本のテレビでおなじみ大家族ドキュメンタリーと同類といっていい。家族構成は70歳を過ぎてもバイアグラいらずという精力みなぎるデヴィッド・シーゲルと31歳年下の妻ジャッキー、双子を含む8人の子どもたち、そして19人いる使用人たち。さらには何匹いるのか誰も把握できていないペットが多数……。ビッグダディことデヴィッドはミスコン優勝者が大好き。奥さんのジャッキーは、元ミセス・フロリダの肩書きを持つ。ミス・アメリカの各州代表者を全員集めてパーティーを開くほどの広~い屋敷で暮らしているシーゲル一家だが、ジャッキーのお買い物癖が激しく、段々と手狭になってきた。そこでシーゲル夫妻は米国最大の自宅をご近所に建て始める。広さ約8400平米(ホワイトハウスの2倍)、ダンスホール、6つのプール、2つの映画館を備えた大邸宅で、その名も“ベルサイユ”。何もない田舎町で生まれ育ち、それぞれ苦労して成功をつかんだシーゲル夫妻にとって、まさに夢の宮殿となるはずだった。
デヴィッド・シーゲルはかつては果樹園の経営者だった。「果樹園を売って、リゾートマンションを建てないか」とビジネスを持ち掛けられるも、この美味しい話を断る。リゾートビジネスはこれから伸びると踏んで、自分で会社を立ち上げたのだ。デヴィッドの会社「ウエストゲート・リゾート」は、タイムシェア(共同所有)リゾートビジネスと呼ばれるもの。ビンボー人にとってリゾートマンションの購入なんて夢のまた夢。でも、リゾートマンションを1週間単位でバラ売りすれば、かなりの廉価で提供できる。ウエストゲート・リゾート社は「説明会に参加すれば、もれなくディズニーのチケットを差し上げます」というエサでビンボー人たちを釣って、超豪華なモデルハウスへと案内する。ふかふかのソファーとベッドに腰を下ろした見学者たちはたちまち目がとろんとしてしまう。ここぞとばかりにセールスマンが「長期ローンさえ組めば、この空間があなたのものになるんですよ」と耳元で囁く。こうして同社はビンボー人たちにリゾートマンションをバンバン売りつけた。デヴィッドは「(ビンボー人は)金持ちになれないのなら、気分だけでも味わえばいい」としたり顔で語る。ビンボー人たちから吸い上げたなけなしのお金が化けたものが、現代のベルサイユ宮殿だったのだ。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事