「大松、空気読め」12球団イチ微妙なチームの『千葉ロッテマリーンズあるある』
#本 #プロ野球
負け試合のマリンフィールド→海浜幕張駅までの道のりは、とても寂しい。
野球の試合があったにもかかわらず、大して混雑することもなく、「(また)負けたか」と、歩道橋をとぼとぼ歩く縦じまユニフォーム姿の一群。吹き来る浜風がミジメさにさらなる追い打ちをかける。22時半ぐらいで近隣の店は閉まってしまうため、ヤケ酒をあおることもかなわず、まっすぐ帰宅するほかない。ロッテファンなら誰しも、一度はこんな体験をしたことがあるだろう。
なにしろ地味。優勝しても翌年はBクラス。勝率1位でのちゃんとした優勝からは、40年も遠ざかり、クライマックスシリーズになるとなぜか無類の強さを発揮する不思議なチーム・千葉ロッテ。『千葉ロッテマリーンズあるある』(TOブックス)は、野球ライターの鈴木長月氏が、こよなく愛する千葉ロッテマリーンズについて著した本だ。
ロッテファンならずとも、野球ファンならば首肯し、ニヤリと笑える240個の“ロッテあるある”について紹介している。その“あるある”もすべて小市民的で、いかにもロッテらしいものばかり。イラストレーターの山里將樹氏が手がけるイラストは、クセになる味わいがあり、笑いのツボに連打を浴びせる。
厳選した3つの“あるある”をご紹介しよう。
(1)大事な時に発症する“一発病”は、歴代エースの持病だと思うことにしている
暗黒時代のエース・黒木知宏、清水直行も被本塁打がバカみたいに多かったが、現エース成瀬善久は“飛翔”が代名詞となるほどの一発病持ち。2010~12年まで3年連続でリーグ最多被本塁打を記録し、今年も期待を裏切りそうもない(7月27日時点ですでに10被本塁打)。
(2)観客に冷や汗をかかせる“劇場”っぷりこそが、ロッテ守護神の真骨頂
クローザーといえば、普通は安心するものだが、ロッテの歴代守護神にはいつもハラハラドキドキさせられる。好不調の波が大きく、不調時には四球→痛打を連発する小林雅英がその偉大なる開祖だ。2001年の対近鉄戦、5点のリードをコバマサ一人で失ったゲームは“炎上”という言葉がふさわしい。
(3)土壇場で空気が読めないのは、10.19からの伝統
88年のパリーグは、1位西武と2位近鉄が優勝を争い、最終戦のダブルヘッダーで近鉄がロッテに連勝すれば逆転優勝という劇的な展開に。第2戦の8回裏、普段あまり長打を打たない高沢秀昭が、この日に限ってめずらしく本塁打を打ってしまい、延長戦の末、引き分けに。プロ野球史上名高い10.19決戦だ。
近年でも「大松尚逸が、日ハム・多田野数人のノーヒットノーランを9回2アウトから阻止する」など、ロッテのKYっぷりはものすごい。空気の読めないロッテがいたおかげで、筋書のない名シーンが生まれるのだ。
上記以外にも、「たけし軍団との一戦にガチで負けている」や「宇宙フリークで科学誌ニュートンに載ったこともある古谷」など、もっとセコく、地味な“ロッテあるある”が山ほどある。ぜひ本書を手に取って、学校や職場ではあまり理解されないロッテファン心を分かち合おう。WE LOVE MARINES!
(文=平野遼)
●すずき・ちょうげつ
1979年、大阪府生まれ。関西学院大学卒。実話誌の編集を経て、フリーライターとして独立 。現在は、スポーツや映画、サブカルチャー分野で雑文を書き散らすほか、月刊誌「EX大衆」(双葉社)にてプロ野球企画をレギュラーで担当中。
●やまざと・まさき
沖縄生まれ。千葉大学大学院を卒業後、一度社会人を経験し、絵を描く生活を送りたくなって専門学校へ。在学中の2011年よりフリーのイラストレーターとして活動中。主な活動媒体はフリーペーパー、雑誌、テレビ番組など。
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