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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.264

戦争映画の悲劇のヒーロー像にNOを突き付ける! 戦場で生き残る恐怖と痛み『ローン・サバイバー』

lonesurvivor01.jpgネイビーシールズ設立以来の大惨事となった「レッド・ウィング作戦」をリアルに再現。200人のタリバン兵を相手にわずか4人で戦うはめに陥る。

 みんなはもう知っている。「この作品は反戦がテーマです」という戦争映画の製作者たちの言葉はただの建前でしかないことを。殺戮シーンや大炎上シーンを撮りながら、ミリタリー好きな製作者たちはカタルシスを感じていることを。「戦争という狂気を描きたかった」と言うのなら分かるが、「反戦がテーマ」ではあまりに薄っぺらでテキトーすぎる。その点、戦争映画としてはかなり規模の小さい『ローン・サバイバー』はそんな見え透いた建前は口にしない。最前線に送り込まれた兵士が体感する恐怖と絶望感をリアルに再現することに全力を注ぎ、観客を否応なしに戦場へ引き摺り込んでしまう。

 『ローン・サバイバー』は米国の海軍特殊部隊ネイビーシールズに所属したマーカス・ラトレルが2007年に出版した実録小説『アフガン、たった一人の生還』(亜紀書房)が原作。2005年にアフガニスタンで行われた「レッド・ウィング作戦」に参加した当事者の視点から描いたものだ。このレッド・ウィング作戦だが、米軍が誇るネイビーシールズ史上最大の惨事とされている。アフガニスタンに拠点を置くタリバン勢力の指導者アフマド・シャーの暗殺を計画したものだったが、偵察部隊としてアフガニスタン山岳地帯に潜入したラトレルたち4人のシールズ隊員たちは200人のタリバン兵に包囲されるという絶望的状況に陥ってしまった。逃げ場のない最悪の状況下での3日間、4人は何を考え、どのように行動したかが描かれていく。

 ネイビーシールズは、選び抜かれた屈強な兵士たちのみで構成された最精鋭部隊だ。『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)でも描かれたように、オサマ・ビンラディン殺害に成功し、その実力を広く知られている。本作はシールズの厳しい訓練の様子から始まる。マーカス・ラトレル一等兵(マーク・ウォールバーグ)たちシールズ隊員は2年半に及ぶ訓練に耐え、固い絆で結ばれていく。身体能力や戦闘術に優れている以上に、どんな局面になっても決してギブアップしない強靭な精神力が最大の武器だった。だが普段は、みんな家族想いで、故郷を愛し、ユーモア好きな愉快な奴らだ。そんな彼らに極秘作戦が言い渡される。アフガニスタンで米兵を虐殺しているタリバンの指導者アフマド・シャーを暗殺せよ。狙撃兵兼衛生兵としてマーカスが選ばれた他、通信兵のダニー・ディーツ二等兵、狙撃兵のマシュー・アクセルソン二等兵、そして指揮官にマイケル・マーフィー大尉の計4名が偵察部隊としてアフガニスタンの山岳地帯に舞い降りる。ターゲットであるシャーの姿はすぐに確認することができた。だが、前線基地との連絡が繋がらない。そんな折、マーカスたちが潜んでいた森を地元の山羊飼いたち3人が通りがかり、ばったり遭遇してしまう。このことからマーカスたちの運命が大きく変わっていく。

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