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空気を読む日本人の「うやむや」「なあなあ」文化を大分析!『正しい日本人のススメ』

tadashii.jpg『正しい日本人のススメ』(宝島社)

 日本人は、場の「空気」を読む。とことん、読む。外国人にしてみたら、もはやエスパー並みだ。小さな島国で育ったわれわれは、「以心伝心」という言葉があるように、口に出さずとも、相手になんとなく伝わる、理解し合えると信じている節があり、プライベートでもビジネスでも、日々、ごくごく自然に場の空気を読みながら生活している。


 『正しい日本人のススメ』(宝島社)は、そんな日本人特有の空気で物事が決まっていく、「うやむや」「なあなあ」の不思議な文化を、英国人の日本文化様式学者のアラン・スミシー氏が来日10年にわたり、とことん研究した調査報告書。お手洗い、満員電車、合コン、行列行動、謝罪、会議、朝礼、残業など、プライベートからビジネスまで、場面ごとに日本のしきたりや習慣、なぜそういう行動をとるのか、その歴史にまで踏み込んで調べ、分析している。

 その冒頭のテーマが、「カラオケ」だ。アラン氏によれば、長年の研究の結果、そのルーツはなんと平安時代に行われた、貴族たちの短歌を歌い合う「歌会」にまでさかのぼるという。当時は、短歌の力量によって歌い手の教養が問われ、ときに恋愛の行方や、政治的な立場までも左右された。それゆえ、カラオケは単なるレジャーを超え、特別なコミュニケーションとみなされ、「自分のパーソナリティーをアピールしたり、メンバーの上下関係や立ち位置、人間性を推し量っている」場ではないか、という壮大な考えにたどり着く。

 そんなカラオケ時の注意事項は、「絶えず盛り上がっていますよ」というムードを演出すること。楽しげでアッパーな空気を停滞させず、「気まずい」状態を避けることが重要であるという。また、人前でこれ見よがしに快感や自信をあらわにすることは「はしたない」とされる日本人独特の概念に言及し、どんなに歌い込んでいて自信のある曲でも、「これ久しぶりだわ~、歌えるかなあ?」と自信なさげに歌い出したり、「ダメだ、今日は声出ないわ」と言って保険をかけたりしている、などと細かな報告もしている。

 カラオケ以外にも、みんなで同じ行動をして仲間意識や結束を固める“バンザイ”などの「コール行動」、ヨソ者に対する心のバリアゆえに心の内を見せず、嫌われないようにする「おもてなし行動」、本音を引き出す必要悪「根回し行動」など、日本の変わったしきたりや文化について、独自の持論を展開。その内容が、“外国人がまたそんなこと言っちゃって”というものではなく、“確かに!”と納得してしまう鋭い分析ばかりなので、ほうほうと納得しながら読み進められる。
 
 また、アラン氏が初めてお葬式に参加し、お焼香をあげるときに、背中越しに何をしているかさっぱりわからず、考えに考えた末「お焼香を食べる」という、とんでもない間違いをおかしたエピソードなど、自らの体験も披露され、驚きと笑いが詰まった内容に仕上がっている。ぜひ、外国人向けに英訳版も発売してほしい一冊だ。
(文=上浦未来)

●アラン・スミシー
1946年生まれ、日本在住10年の英国人。文化様式学者として、日本各地でフィールドワークを精力的に行う。最初に覚えた日本語は「モッタイナイ」。

最終更新:2014/03/11 21:00
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