6人の人気脚本家からひも解く、テレビドラマの歴史と魅力『キャラクタードラマの誕生』
#本
2013年、『あまちゃん』や『半沢直樹』がヒットし、テレビドラマは大きな話題となった。実は、このふたつの作品には共通点がある。それは、どちらも「キャラクタードラマ」であることだ。
成馬零一氏が上梓した『キャラクタードラマの誕生: テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)は、岡田惠和(『銭ゲバ』『泣くな、はらちゃん』)、坂元裕二(『それでも、生きてゆく』『最高の離婚』)、遊川和彦(『家政婦のミタ』『純と愛』)、宮藤官九郎(『11人もいる!』『あまちゃん』)、木皿泉(『すいか』『野ブタ。をプロデュース』) 、古沢良太(『鈴木先生』『リーガルハイ』)という、現在のテレビドラマを代表する6人の脚本家について評論したもので、各章の合間には「ホームドラマ」「トレンディドラマ」「キャラクタードラマ[1]、[2]」「朝ドラ」「現実とフィクション」という、テレビドラマ史を体系的に振り返るコラムが挟み込まれている。
テレビドラマ評論の多くは、山田太一、向田邦子、倉本聰といった、後に「シナリオ文学」などと呼ばれるような重厚な人間ドラマを描いた脚本家を高く評価するあまり、それ以降のトレンディドラマは批判的に語られがちだった。ましてや、漫画原作のドラマは、それだけで黙殺されてしまう。しかし、本書でテレビドラマの歴史やその連続性を知ることで、それがいかに不当な評価であるかが浮き彫りになってくる。
成馬氏は、前出の「キャラクタードラマ」について、本書の中で下記のように定義している。
・漫画やアニメを原作とするドラマ、もしくは漫画やアニメの表現(方法論)を作品内に持ち込んだドラマ
・役者のキャラクター性に強く依存したドラマ
・主人公の個性がドラマの前面に出ているドラマ
・人間の内面をキャラクターという表現で描いたドラマ
前著『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)で、成馬氏はジャニーズの俳優たちを例にとり、最近のテレビドラマの演技は、複雑な感情の機微を感じさせる「人間芝居」と、個性がハッキリとしたキャラを演じる「キャラクター芝居」があると指摘し、分類している。「キャラクタードラマ」とは、それを元にして定義された概念である。これまでの映画的な評価基準では、「人間芝居」よりも「キャラクター芝居」は低い評価をされがちだった。その評価基準は、そのまま「キャラクタードラマ」に対する低評価にもつながっている。もちろん、原作を安易に翻案しただけのドラマも少なくはない。しかし、キャラクタードラマの本質は、漫画をそのまま実写で再現することではない。
「生身の人間が二次元のキャラクターとして振る舞おうとすればするほど、逆に身体性や内面がにじみ出てしまう。そしておそらく、そのにじみ出る人間性にこそキャラクタードラマの面白さが宿るのだ」(本書より)
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