「今年最高の3D映画」との呼び声多し! サンドラ・ブロック×ジョージ・クルーニー『ゼロ・グラビティ』
今週紹介する最新映画は、宇宙空間で孤立してしまった宇宙飛行士と、セレブ宅の空き巣を繰り返す少女グループをそれぞれ描く2本。われわれ一般の観客にはおよそ縁のない特殊な状況を、スリリングに疑似体験させてくれる作品だ。
公開中の『ゼロ・グラビティ』(2D/3D上映)は、『トゥモロー・ワールド』(06)のアルフォンソ・キュアロン監督がサンドラ・ブロックを主演に迎え、最新VFXと3D技術を駆使して描いたSFドラマ。地球上空60万メートルのスペースシャトル船外で作業をしていたメディカルエンジニアのストーン博士(ブロック)とベテラン宇宙飛行士のマット(ジョージ・クルーニー)は、破壊された人工衛星の破片群が猛烈なスピードでシャトルに襲いかかる事故に遭遇。シャトルは大破し、ほかの乗組員は死亡。2人は宇宙空間に放り出されてしまう。酸素の残量はわずかで地球との交信手段も断たれたストーンとマットは、互いの身体を1本のロープでつなぎ、小型ジェット推進装置を使って国際宇宙ステーションを目指すが……。
冒頭の和やかな船外作業から、NASA管制官からの緊急避難の呼びかけ(声の出演は『アポロ13』のエド・ハリスという憎いキャスティング)、流星群のように襲いかかる宇宙ゴミ、投げ出される主人公らという急展開が、相当な尺の「長回し」で描き出されることにまず圧倒される。その間にも自在に動き回る視点が宇宙飛行士のヘルメットの中に入ったり出たりと、実際にはVFXを駆使した擬似的な長回しなのだが、実写とCGのつなぎ目をまったく感じさせない自然な映像に、観客もまた2人が遭遇する予想外のアクシデントを間近で目撃している気分になるはず。『しあわせの隠れ場所』(09)でアカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得したサンドラ・ブロックは、大半のシーンで一人芝居という難役ながら、不安、恐怖、絶望、そして生還する意志を説得力十分に演じ切り、本作でもオスカー候補の呼び声が高い。新開発の技術も駆使して創り出された3D映像は、宇宙空間の奥行き、シャトルの壮絶な事故、無重力空間に漂う宇宙飛行士などを驚異的な臨場感で描き出すことに成功しており、今年最高の3D映画と断言したい傑作だ。
続いて12月14日公開の『ブリングリング』(R15+)は、ソフィア・コッポラ監督、エマ・ワトソン主演で実際に起きた少女窃盗団を題材に描く青春ドラマ。ロサンゼルスの高級住宅街カラバサスに暮らす少女ニッキー(ワトソン)らは、近隣に邸宅を構えるハリウッドセレブの華麗な生活や身にまとうブランド品に憧れ、意気投合する。彼らはネットの地図でセレブ宅を調べ、SNS等で得た情報で留守になる隙を狙って侵入。あっけなく空き巣に成功し、また盗んだブランド品が周囲から羨望を集めることにも味をしめ、通称「ブリングリング」(キラキラしたやつら)の5人組は大胆に空き巣を繰り返していく。
先月公開の『ウォールフラワー』に続き、エマ・ワトソンが“脱ハーマイオニー”と言わんばかりの奔放な不良少女役に挑戦。エキセントリックな言動とある種のカリスマ性が周囲を巻き込んでゆくティーン窃盗団の中心人物を、心に問題を抱えた痛々しさも込みで魅力的に演じた。ガーリー・カルチャーを牽引してきたソフィア・コッポラ監督らしく、『マリー・アントワネット』(06)と同様にファッションやジュエリーのきらびやかさが女性観客の目を楽しませてくれそう。実際に事件の被害にあったパリス・ヒルトンが自宅をロケ地として提供したことも話題で、セレブの生活をのぞき見る俗っぽい快感も味わえる。その一方で、華美なブランド品に憧れSNSで仲間意識を確認する若者の、内面の空虚さと孤独感を浮き彫りにした切実な作品でもある。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『ゼロ・グラビティ』作品情報
<http://eiga.com/movie/57690/>
『ブリングリング』作品情報
<http://eiga.com/movie/78304/>
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事