『あさイチ』でも賛否沸騰! 脱法シェアハウス規制は貧困層を救うのか?
最近、若者の新しい生活スタイルとしてちょっとしたブームになっているシェアハウス。メディアでも取り上げられる機会が増え、現在放映中のフジテレビの番組『テラスハウス』では、海辺のシェアハウスを舞台に、やけにキラキラした若者たちの共同生活が描かれている。プロサーファーにモデル志望、作家志望、東京藝大生、そして現役アイドルと、今時ありえないような“リア充”たちが一つ屋根の下で恋や友情のドラマを繰り広げるのを見ていると、「シェアハウスこそが、この暗い時代の唯一の希望なのか!」という気さえしてくる。
ところが最近になって、そんな憧れの世界とはかけ離れた、シェアハウスの実態が明らかになりつつある。
劣悪で危険な「脱法シェアハウス」なるものが増加し、トラブルが頻発していると、一部の新聞やテレビが報道し始めたのだ。特に、NHKの朝の情報番組『あさイチ』がこの問題を取り上げたことで世間に知られるようになり、さまざまな物議を醸し出すこととなった。
いったい「脱法シェアハウス」とは具体的にどういうものなのか? その内容をのぞいてみると、確かにびっくりするような物件がめじろ押しだ。
あるニュース番組で紹介された物件では、二段ベッドの一つが一部屋となっており、間取りはわずか1.7畳。これは東京拘置所の独居房(三畳余)の約半分の広さだ。上下の部屋の仕切りはただ側面に板が張ってあるだけで、当然鼻をかむ音や寝返りの音など些細な雑音も丸聞こえだという。
また別の報道では、1フロアを58部屋に仕切ったシェアハウスでぼや騒ぎがあったことが紹介され、一歩間違えれば大惨事を引き起こしかねないと指摘されていた。
要するに、シェアハウスは新しい生活スタイルどころか、弱者につけ込む貧困ビジネスと化しており、しかも、なんの規制も受けず野放しに晒されてきたらしいのだ。
そして、こうした実態が明るみに出るのと並行して、政界からは与野党問わず「脱法ハウスを取り締まれ」という声が上がり、国土交通省も既存法令の寄宿舎の基準を適用する方針を打ち出した。そういう意味では、脱法シェアハウスの危険性がようやく認識され、遅まきながら行政も規制に乗り出したわけで、一見すると、悪い流れではない感じがする。
だが、一方ではまったく逆の見方もある。例えば、先の『あさイチ』がこの問題を取り上げた直後、番組には「貧乏人から住まいを取り上げるのか」「シェアハウスを悪者にする報道は問題の一面しか見ていない」という趣旨の批判が殺到。ネット上でも「業者や住んでる人はどうなるんだ?」「ネカフェよりましだろ。必要じゃね?」「マスゴミは貧乏人のことを何もわかってない」「利用する人が納得して住んでいるんだから、問題はない」といった、シェアハウス擁護派の意見が多数アップされた。
確かに、脱法シェアハウスは今、ネットカフェに代わって、弱者、貧困層の避難所の役割を担っている側面がある。
例えば、東京都では2010年7月から施行された「インターネット端末利用営業の規制に関する条例」によってネットカフェに入会する際、住所確認が求められるようになり、住居代わりにしていた利用者が行き場を失っていた。そこに脱法シェアハウスが登場したことで、ネカフェ難民が移り住むケースが増えているという。
そもそも、住居として比べれば、ネカフェより脱法ハウスのほうがはるかにましだ。例えば、ネカフェだと一泊が2000円程度なので月に6万円くらいかかるが、脱法ハウスの家賃は月3万円前後。敷金礼金をほとんど必要とせずに入居できて、住民登録もできるから、職探しも容易になる。つまり、ネカフェ難民は脱法ハウスに移り住んだことで、相対的にではあるが、住環境が改善した部分もあるのだ。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事