劇場で体験せよ! 壮大な映像魔術にグイグイ引き込まれる『グランド・イリュージョン』
#映画
今週も続々と封切られる新作映画の中から、選り抜きの2作品を紹介したい。
『グランド・イリュージョン』(10月25日公開)は、大金を盗み出したマジシャン4人組とFBI捜査官らの攻防を豪華スター共演で描くクライムエンタテインメント。カリスママジシャンのアトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)率いるイリュージョニスト集団「フォー・ホースメン」が、ラスベガスでのショーの最中にパリの銀行から金を奪うという超絶マジックを披露し、観客を驚かせる。FBI捜査官のディラン(マーク・ラファロ)とインターポールのアルマ(メラニー・ロラン)は、4人を逮捕し取り調べるが、証拠がなくしぶしぶ釈放。捜査陣はマジックの種を暴くことで有名なサディウス(モーガン・フリーマン)に協力を依頼し、4人の次なる犯行を阻止しようと万全の体制を敷くが……。
『トランスポーター』のルイ・レテリエ監督による、小気味よいカット編集とスペクタクルな映像魔術にグイグイと引き込まれる。マジックと映画が、これほど相性がいいものだったとは、と驚喜してしまう大傑作。まず壮大なイリュージョンで観客の度肝を抜き、そのあと緻密に組み合わされた数々のトリックの種を明かす。見事なマジックを目にした興奮と、疑問が鮮やかに解き明かされる快感。この構造がストーリー中3回のバリエーションで提示されるが、映画全体にも大きな1つのトリックが仕掛けられている。ネットや口コミでネタバレされる前に、早めに劇場でイリュージョンを「体験」することを強くオススメしたい。ラストですべての謎が明らかになった後、再見したくなる人が続出するはずだ。
続いて10月26日公開の『潔く柔く きよくやわく』は、いくえみ綾の人気少女コミックを原作に、長澤まさみと岡田将生の初共演で映画化した切ないラブストーリー。幼なじみのカンナ(長澤)とハルタ(高良健吾)は、高校1年で同級になったマヤ(中村蒼)やアサミ(波瑠)と、それぞれの思いを秘めたまま仲良く過ごす。だが花火大会の夜、カンナがマヤから告白されたのと同じ頃、携帯でカンナにメールを送っていたハルタが事故死。そのせいで恋ができなくなったまま社会人になったカンナは、出版社で働く禄(岡田)と出会う。無遠慮で悩みなどなさそうな禄が、実は自分と似たつらい過去を背負っていることを知り、カンナの気持ちが徐々に変化してゆく。
監督は『ただ、君を愛してる』(06)、『僕の初恋をキミに捧ぐ』(09)など恋愛物を多く手がける新城毅彦。原作のオムニバス形式の群像劇を、カンナと禄を両軸に再構成したためか、若干強引な展開や説明不足に思われる描写も。とはいえ、久しぶりの純愛映画主演となる長澤まさみをはじめ、主要キャストがピュアな登場人物をいずれも魅力的に演じていて、若い世代の観客を中心に広く共感を呼びそう。淡い恋の終わりや大切な人との死別など、誰もが胸の奥にしまっている忘れがたい記憶に、穏やかな気持ちで向き合うことを教えてくれる感動作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『グランド・イリュージョン』作品情報
<http://eiga.com/movie/78217/>
『潔く柔く きよくやわく』作品情報
<http://eiga.com/movie/77839/>
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