店構えは外国人の勘違いした日本──国会だけじゃない、赤坂にあった“元祖・高級吉野家”の伝説
11日に国会議事堂の衆議院敷地内で営業が始まった、牛丼チェーンの吉野家・永田町一丁目店。その目玉商品となっているのが、国産和牛をふんだんに使った「牛重」だ。立派な重箱に入ったこのお重の値段は1,200円。国会見学の名物になるかと思いきや、自民党の平沢勝栄衆議院議員らが「『国会だけで食べられるのはおかしい』と地元で言われた」などと物言いをつけ、早くも暗雲が漂っているのは、すでにさまざまなメディアが報じている通り。
この吉野家で、一般国民が食べることのできる可能性は極めて低い。通常、国民が国会に入る方法は見学に申し込むことだが、吉野家は見学コースから外れているので、食べることはできない。希少価値、和牛を用いた高級さゆえに1,200円、という値段は妥当に思える気もするのだが……高級牛丼の行方やいかに?
さて、前代未聞の雰囲気が漂う吉野家の高級牛丼。だが、通常の牛丼からすれば桁外れの値段の商品は、吉野家にとって初めての挑戦ではない。今を去ること28年前の1985年、吉野家は、もっとマジな高級牛丼に挑戦しようとしたことがあったのだ。
それが、赤坂のTBS近くの一ツ木通りにあった「特選吉野家あかさか」である。バブルの前夜のこの時期、外食産業では並外れた高級志向が一つのブームになっており、ファミレスチェーンのすかいらーくでは、一個880円の高級ハンバーガーを発売し話題になっていた。
そうした流れの中に出現した高級吉野家の牛丼は、一杯600円。味噌汁とおしんこのセットは750円であった。当時は牛丼並が370円だったので、ちょっとした割高感がある。
しかし、値段に見合って味は確かだった。今、ちまたに広がっている「B級グルメ」のワードの考案者であり、現在もB級グルメライターとして活躍する田沢竜次氏は「肉質もアップしていて、確かにおいしかった」と、当時の味を思い出す。その味の素晴らしさを記録するのは、田沢氏の著書『東京グルメ通信』(主婦と生活社、1985年/この本が“B級グルメ”というワードの初出である)の一節だ。ちょっと、引用してみよう。
<やけに底の深い牛丼を持ち上げると、おや確かに吉野家牛丼の“匂い”がする。材料も同じ牛肉+玉ネギコンビだ。さすがに牛肉は、脂身がほとんどなく、しっとりと柔らかい。漬け物のレイアウトも美しい。紅ショウガの入った容器だって重々しいのだ。
こんなムードだからして、ガツガツと一気食いってなわけにもゆかず、どんぶりパワーも心なしか気落ちしているようだ。なんか“場違い”なのよね>
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