「商売としてはオイシイが……」故・山崎豊子さんの遺作『約束の海』続編に複数の作家が名乗り
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『白い巨塔』『大地の子』など数々の社会派小説で人気だった作家・山崎豊子さんが9月29日、心不全のため88歳で逝去したが、「週刊新潮」(新潮社)で連載していた『約束の海』を引き継ぎたいという作家が複数、名乗りを上げているという。
新潮社は山崎さんから1部20回分の原稿は受け取っているが、それ以降のことについては終了ではなく「未定」と含みを持たせている。ただ、わざわざ巨匠の続編を書きたいとする作家が登場しているのはなぜか。山崎さんと生前、付き合いのあった編集者が語る。
「山崎さんをリスペクトするあまり、生前から弟子を自称する若い作家がいるんですよ。山崎さんは一本気な性格で弟子など取らなかったんですが、それでもなんとか接触していた者もいたんです」
『約束の海』は、潜水艦に乗り込む二等海尉を描いた作品で、1988年に起きた「なだしお」の衝突事件をもとにしたもの。名乗りを上げている作家は「山崎さんが所属した毎日新聞社の人脈や新潮社の人間に接触したりしていますが、実際に山崎さんの代わりに書ける者は日本中探してもなかなかいないのでは。森村誠一さんなど筆力のある大物作家なら歓迎されるでしょうが、こういう仕事を引き受けるとは思いませんし」(同)
続編の執筆には当然、山崎さん側の許可も必要となるが、財団法人 山崎豊子文化財団は「出版社に聞いてください」とあまり関心がない様子。当の週刊新潮の編集部に問い合わせると「続編はありません」と否定した。
ただ、同誌の関係者は非公式に「出せば、1冊50万部はいけるといわれるのが山崎さんの著作ですし、ドラマ化しやすい話でもあるので、完成を楽しみにしていたテレビプロデューサーもいた」と話しており、商売としてはオイシイという感触は示している。
実際、各出版社は山崎さんの作品を緊急増刷。新潮社も『女系家族』『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』などの文庫合計30万部の増刷を決めた。
亡くなった大物の続編は過去、伊藤計劃の30枚の原稿を円城塔が完成させた『屍者の帝国』や、夏目漱石の未完成小説『明暗』を引き継いだ水村美苗の『續 明暗』などがあり、「あくまで他人が書いた続編としてなら可能性はある」と前出編集者。不世出の作家、山崎さんの遺作に注目が集まる。
(文=ハイセーヤスダ)
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