「伝える力は、伝えたいという愛情に尽きる」生粋の“てれびバカ”西田二郎が語る、テレビの未来
#テレビ #インタビュー #バラエティ #テレビマンに訊く
『ダウンタウンDX』(読売テレビ)をはじめ、数々のテレビバラエティを世に送り出しているディレクター、西田二郎。このたび『水曜どうでしょう』(HTB)の名物Dである藤村忠寿氏との対談をまとめた『てれびバカ ツッパリオヤジvs小悪魔オヤジ』(KADOKAWA)を上梓、大きな反響を呼んでいる。今バラエティが抱えている問題点は? これからテレビはどうなるのか? 最前線に立つ西田氏に、その思いを訊いた。
――『てれびバカ』拝読しました。地方局の希望『水曜どうでしょう』の藤村さんと、大阪からバラエティを牽引してきた西田さんの対談とは、かなりのインパクトでした。
西田二郎(以下、二郎) 僕自身、読売テレビというローカル局で『ダウンタウンDX』を20年やらせてもらっていて、はたから見たら中央でやっていると思われがちなんですけど、立ち位置的には藤やんに近いものがある。僕は大阪から番組を全国に放送していて、一方、藤やんは番組販売という形で全国にコンテンツを届けることを「開拓」した人。そういうところで、お互いシンパシーがありましたね。
――「テレビが面白くなくなった」と言われて久しいですが、今日は西田さんが今のテレビをどう捉えていて、その中でどういう立ち位置にいて、未来のテレビはどうなっていくと考えているのか、そのあたりをお伺いしたいと思っています。
西田 まず踏まえなければならないのは、物事は面白くしようとする時点でつまらなくなっているということ。面白いと思ったことを実現していくというのは、その時に見えたものを形にしていく作業なので、実は一秒ずつオモロなくなってるんですね。オモロいものというのは、オモロいと思った時点がピークにオモロい。だから、詰め切らんところで止めることも大切です。僕らはO.A.で、オモロさのピークを取らなアカンわけですよ。だったら、このピークを超える余地を残しておかないとダメ。僕たちの場合はそれがダウンタウンで、ダウンタウンは僕らがどんだけピークでオモロいと思っても、それを超えるだけの余地を絶対に持っている。エンタテインメントの人間は、読めないところを、自分の中に残しておかないといけないんですよ。
――西田さんが担当している『ガリゲル』や『ガリガリゲル』に出演している芸人さんは口を揃えて「西田さんは何を考えているか分からない」と……。
西田 僕ね、芸人さんは安心をさせたらアカンと思てるんです(笑)。芸人さんはクリエイターなんですね。見えてしまったらワクワクしないから、どっか「分からんな」というところを残しておかないと。
――たとえば『ガリガリゲル』の名物コーナー、“アニメ大喜利”は題材もすごくシュールで、MCであるライセンスの2人も「もはやバラエティではなく、ドキュメンタリーです」とおっしゃっていましたが。
西田 大喜利って、芸人さんの本当に面白い一面を切り出す、ある種、聖域なんです。だから、「大喜利やってください」って頼んだことは、実は一度もない。アニメ大喜利は(ライセンス)藤原君にどうしてもやってもらいたかったから、Twitterで「藤原君アニメ好き?」って質問したんですよ。そしたら彼が「ハイ」言うて、大喜利を了承させたというよりは「藤原君が、アニメが好きっていうから」という理由に乗っかった(笑)。たぶん「大喜利してくれへん?」でもイケる話ですけど、やっぱりそれしたらアカンのですよ、自分の中で。
――芸人さんに「なんか面白いことやって」っていうのと同じ感覚……?
西田 カンペ出して「ここでボケて」っていうのと同じ(笑)。うまく言えないんですけど、僕が番組を作る上で大切にしていることって、そういうところ。ノンスタの石田君には『ガリゲル』でおかんをおんぶしてもらったんですけど、その時も「君の中にある家族への思いを考えたときに、石田くんにしかできないことある思うねん。テレビを通じて見せられる親子の関係が」って、延々としゃべって。石田君が「分かります」って共感してくれた後に、「あんな、おかんをな……おんぶしてほしいねん」。
――(笑)
西田 石田君もキョトンですよ。彼にしてみたら、面白い感じでやっていいのか、どうしていいのか分からない。石田君の家族の話聞きながら僕は号泣してるので、どうやらふざけているわけでもなさそうだ。最終的には「なんのことかよく分かりませんけど、頑張ってみます」と了承してくれて。理解できてないと物事が進まないのではなくて、分からへんけど物事が動いていくっていうほうが、僕はステキやなと思うんです。結果「おかんおんぶ」はものすごく反響があって、石田君はレギュラーがバババッと増えたらしいし。
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