「淫乱処女」であるメガネ男子・関根くんは、非モテの敵か味方か――『関根くんの恋』
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「メガネ男子」ってやつが憎い。かくいう僕も、小学校時代からメガネをかけてきた生粋のメガネ使いだ。コンタクトレンズに浮気したことだって一度もない。なので、ごくごく当然のこととして、自分のことをメガネ男子だと思っていたんだけど、何年か前に女の子に言われた。「あんたはジャンルとしては、メガネ男子じゃなくて“のび太”だ」と。
のび太。彼女の区分では、日本を代表するメガネドレッサーであるところののび太は、メガネ男子ではないということらしい。確かにのび太は原作では、大人になってからメガネをやめているけれど、たぶんそういうことではない。メガネ男子とは、メガネをかけてりゃいいってもんじゃないのだ。
そんなこともあって、僕はメガネユーザーでありながら“メガネ男子”というやつに嫉妬している。それでいうと、ここ数年一番悔しいのが『関根くんの恋』(河内遙)の関根くんだ。関根くんに対する感情は、愛憎としかいいようがない。
『関根くんの恋』は、タイトルどおり主人公・関根圭一郎の恋愛を描いた作品だが、この関根くんがそそる。三十路で、周囲の女性がうっとりしてしまうほどのイケメン。仕事も抜群にできるし、なんでも人並み以上にこなせる。だけど、関根くんのすごみは、そういうスーパーマン的な部分ではない。
関根くんは、イケメンで優秀すぎるがゆえに、積極的に自分から女性にアプローチせずに済んできた。そういう関根くんが、人生で初めて自分の恋心に気付くところから物語は始まる。しかも、その恋に気付くのは、その相手が結婚した後なのだ。そして、そこから関根くんの新しい恋が始まっていく。
そういう関根くんの姿は、モテない男のそれでもある。ヒロインである如月サラに習う手芸に没頭しながら、ああすればよかったとかこうすればよかったとかイジイジ悩む姿は、はっきりいって童貞くさい。そういう関根くんが、どこか肯定され、許されていく物語は、モテない人生をやってきた僕にとっても共感でき、甘い気持ちにしてくれる。
一方で、関根くんの煩悶は強烈な魅力でもある。繊細なイケメンメガネ男子である彼が、童貞みたいに不器用に悩む。しかも、悩みながらも、女の子がベンチに座るときにさっとハンカチを敷いてあげたり、ごく当たり前みたいに花束を抱えて絵になってしまう。その立ち振る舞いが、いちいち完璧で色っぽいのだ。悔しいけれど、こんなことはモテない僕には絶対できないし、できてもサマにならない。関根くんは共感できる一方で、その色気で圧倒し、絶望させてくる。
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