同僚アナとノーガードで打ち合う、本音トークの地下闘技場『田中みな実 あったかタイム』
#女子アナ #TBS #ラジオ #逆にラジオ
しゃべりと笑いと音楽があふれる“少数派”メディアの魅力を再発掘! ラジオ好きライターが贈る、必聴ラジオコラム。
ある女性のキャラクターを語るとき、その言動が「天然」か「ぶりっ子」かという判断を、人は無意識のうちに下している。存在を丸ごと全肯定することに喜びを覚える一部の寛容なアイドル・ファンでない限り、そのキャラクターが作為的であるか否かというのは、好き嫌いの決定的な判断材料になり得る。たとえばTBSアナウンサーの田中みな実は、今のところ明らかに後者と見られているだろう。「週刊文春」(文藝春秋)の「嫌いな女子アナ」アンケート二連覇という実績が、それを如実に物語っている。
では、田中はどこまで本物のぶりっ子なのか? いや「本物のぶりっ子」は「人として偽物」ということになるので紛らわしいのだが、「本音のメディア」といわれるラジオであれば、きっとその真偽が明らかになるはずである。
彼女のラジオ番組『田中みな実 あったかタイム』(TBSラジオ 毎週土曜18:30~19:00)は、どういうわけか、いま最も緊張感あふれるラジオ番組のひとつである。すでに番組タイトルからして十二分にきな臭いが、その異様に牧歌的な番組名は、結果としてむしろ内容の危うさを際立てるために存在している。そしてここで言う「緊張感」や「危うさ」とは、シンプルに「リアリティー」や「面白さ」と言い換えることも可能で、実はこの番組、「真正面から本音をぶつけ合う」という、非常にラジオ的な根本原理で回っているのである。
とはいえ番組の基本構造は、会社の同僚であるTBSアナウンサーをゲストに呼んで語り合う「あったかトーク」というコーナーを中心に、その前後に彼女の一人しゃべりを配した、至ってシンプルなもの。アナウンサー同士、しかも同じ会社の社員同士のトークとなると、互いに保身前提で全方位的に気を遣うような、いかにも生ぬるい内容を想像してしまうが、実際にはむしろその逆。同じ職場であるという互いの距離の近さを利用したノーガードの近接格闘の様相で、遠慮会釈なく踏み込んだステップから喜怒哀楽、さまざまなパンチが繰り出される。
たとえば、後輩アナウンサーの小林悠を迎えた回では、小林の趣味である「仏像好き」「ダム好き」を「作戦」だと田中が激しく追及。「美人が親近感を持ってもらうためのかわいさアピール」とまで言ってのけ、しまいには「なんか嫌なことあった? だからダムとか見て、気持ち解放されちゃってんじゃないの?」と勝手に心配までし始めるという怒濤の展開。しかし、必ずしも田中の一方的な攻勢ではなく、田中が「あざとさを感じる」と小林を評すれば、「あなたにあざといと言われたくないです」と、後輩の小林も返す刀で激しく切りつける。
また、先輩アナウンサーの駒田健吾を迎えた回では、「距離がある感じ」「苦手なタイプのアナウンサー」と番組冒頭から田中への苦手意識を表明していた駒田が、トークが進むにつれ田中からのダメ出しにロープ際へと追い込まれてゆき、「(TBS社屋に)田中さんと会わなくて済む動線がほしい」という、本気でそう思ってなければ絶対に出てこない究極の一言が駒田の口からリリースされるに至る。
いやもちろん、同僚だからこそここまで言っても大丈夫、という意識はところどころ垣間見えるし、互いの声のトーンからはユーモアも少なからず感じられる。しかし一方で、本気であり本音であるというのも、そのフレーズの端々から如実に伝わってくる。
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