酔いどれ3人組のドタバタ劇も、ついに見納め!『ハングオーバー!!! 最後の反省会』
#映画
今週紹介する新作映画は、おバカで下品なコメディと、禁酒法時代の無法者たちを描いた暴力と愛と復讐のドラマ。いずれもアメリカの端的な一面を切り取って劇的に提示してくれる、ぜいたくなハリウッドエンタテインメントだ。
公開中の『ハングオーバー!!! 最後の反省会』は、世界的大ヒットを記録した人気コメディ『ハングオーバー!』シリーズの完結編。かつて、ラスベガスとタイで泥酔しては騒動を繰り広げてきたフィル、ステュ、アランの3人組は、大人になりきれない息子アランに心を痛めて他界した父親の葬儀で再会する。同じ頃、タイの刑務所に収監されていたアジア系ギャングのチャウが脱獄し、秘かに米国へ渡航してメル友のアランに接触。昔、チャウから金を盗まれたギャングのマーシャルは、3人組の親友ダグを人質にとり、フィルたちにチャウを見つけて金を取り戻すよう要求する。
監督は3作続投のトッド・フィリップス。フィル役のブラッドレイ・クーパー、ステュを演じるエド・ヘルムズ、そしてアランに扮するザック・ガリフィアナキスの3人が困惑顔で同じフレームに収まっているだけで、自然と笑いがこみ上げてくる。ケミストリーを発揮するトリオを振り回す2人のギャング、ケン・チョンとジョン・グッドマンもいい味。特にチャウ役のチョンは、アクションスターばりの本格的なスタントを数多くこなし、物語をダイナミックにリードする。今回の旅を通じてアランが成長し、彼らが織りなすドタバタもとうとう見納め。前2作をDVDなどでしっかり予習して、最後まで心おきなく爆笑していただきたい。
続いて6月29日に封切られる『欲望のバージニア』(R15+)は、アメリカ禁酒法時代の実話を基にしたドラマで、シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ジェシカ・チャステインらの豪華共演も話題の作品。1931年のバージニア州、密造酒ビジネスが最も盛んな無法の地で、荒くれのボンデュラント3兄弟は「不死身」の名を馳せていた。しかし、次男フォレスト(ハーディ)がシカゴから来た女性マギー(チャステイン)に心を奪われ、三男ジャック(ラブーフ)は牧師の娘バーサ(ミア・ワシコウスカ)に恋したことから、兄弟の力関係に変化が。一方、新任の捜査官レイクス(ガイ・ピアース)は高額のワイロを要求するも、兄弟はこれを拒否。非情なレイクスは、兄弟の愛する女性や仲間への脅迫と暴力をエスカレートさせていく。
オーストラリア出身で『ザ・ロード』(09)のジョン・ヒルコート監督がメガホンを取った。1930年代を見事に再現したセットに、古酒のようにしみじみ味わい深い映像。その中で個性豊かなキャストたちが、入魂の演技をたっぷり見せてくれる。とりわけトム・ハーディの圧倒的な存在感と、ジェシカ・チャステインの憂いを帯びた魅力が印象的。大切なものを命懸けで守ることの意味、報復行為の是非を含め、現代のアメリカの状況と照らし合わせても大いに考えさせられる映画だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『ハングオーバー!!! 最後の反省会』作品情報
<http://eiga.com/movie/77571/>
『欲望のバージニア』作品情報
<http://eiga.com/movie/77466/>
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