ウィル・スミス親子が再共演! 鬼才・シャマラン監督が放つスペクタクル『アフター・アース』
#映画
今週紹介する新作映画2本は、ハリウッド製のSFアクションと、和製の人間ドラマ。場面設定は大きく違えど、いずれもメインキャラクター2人の重層的な関係性をじっくり描いたことで、見応えのある作品に仕上がっている。
『アフター・アース』(公開中)は、ウィル・スミスとジェイデン・スミスが『幸せのちから』(06)以来7年ぶりに親子で共演した、SFサバイバルアクション。環境が激変した地球を人類が放棄して別の惑星に移住してから1000年。伝説的な軍司令官サイファ(ウィル)と息子で軍候補生のキタイ(ジェイデン)は、宇宙遠征の途中で見知らぬ惑星に不時着する。大破した船体の一部が落下した100キロ先へ救援要請発信器を求め、重傷で動けない父に代わり、キタイは探索の旅へ。だが、この星こそ過酷な自然環境のなか大型野生動物が支配する変貌した地球であり、実戦経験のないキタイにさまざまな危険が襲いかかる。
息子ジェイデンとの会話を基に原案を作ったウィル・スミスが、『シックス・センス』(99)のM・ナイト・シャマランに脚色と監督を依頼した本作。親と子の葛藤や絆に加え、偉大なる先達とそれに憧れ追いかける後進という構図も、スミス親子の現実の関係性が投影されているようで興味深い。大自然の猛威、凶暴な野獣、そして究極の生物兵器「アーサ」との戦いを通じて、キタイが精神的に成長する過程がスピーディーなアクションと共に楽しめる。シャマラン監督といえば、初期作品のトレードマークだった「どんでん返し」が最近見られないのが寂しくもあるが、「恐怖」を克服することが成長のカギになっているあたりに、インド出身の監督らしい東洋思想のテイストも感じさせる。
続いて6月22日公開の『さよなら渓谷』(R15+)は、吉田修一の同名小説を原作に、真木よう子主演で映画化した大人向けのドラマ。緑豊かな渓谷で母親が幼い息子を殺害する事件が起こり、母子のアパートの隣室に住むかなこ(真木)と俊介(大西信満)も騒動に巻き込まれる。現場で取材を続けていた週刊誌記者の渡辺(大森南朋)は、俊介が15年前にかかわった事件が2人の関係に影を落としていると知り、かなこと俊介の過去と現在をめぐる秘密に迫っていく。
真木よう子が難役のキャスティングに渾身の演技で見事に応えた。吉田修一原作の過去の映画化作品、『パレード』や『悪人』(ともに10)と同様に、本作でも「心の闇」「悪」「罪」の本質にするどく迫り、男女間の「愛と憎しみ」「購(あがな)いと赦(ゆる)し」をヒリヒリするような痛みと共に提示する。メガホンを取ったのは、『まほろ駅前多田便利軒』(11)の大森立嗣監督で、同作に続き実弟の大森南朋を起用したことでも話題だ。切実さとやるせなさが全編に漂いながらも、一筋の希望を内包する穏やかで温かみのある映像が胸にしみる。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『アフター・アース』作品情報
<http://eiga.com/movie/58024/>
『さよなら渓谷』作品情報
<http://eiga.com/movie/77717/>
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