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ガンホー株価100万円超 ソフトバンクによるたくみな株価吊り上げの実態

 サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。

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ガンホー株価100万円超 ソフトバンクによるたくみな株価吊り上げの実態 – Business Journal(6月3日)

post_2235.jpg(「ガンホー・オンライン・エンターテイメント HP」より)

「営業利益が初めて1兆円の大台を突破する」。ソフトバンクの孫正義社長は4月末の決算説明会で、2014年3月期の連結営業利益の超強気の見通しを明らかにした。「営業益が1兆円を超えたことがあるのは、トヨタ自動車とNTTの2社だけで、われわれが3社目になるのではないか」と胸を張った。1兆円超の根拠として、連結子会社にしたガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下、ガンホー)分の1500億円の利益計上があげられる。

 ジャスダック上場のゲーム会社・ガンホーは、もの凄い勢いで株価が上昇し、5月14日に年初来高値の163万3000円をつけた。時価総額は1兆8807億円に達し、ソーシャルゲームのグリー、DeNAを抜き去り、任天堂をも越えた。ソニーに迫る勢いだ。

 “1兆円クラブ”に新たに登場したのは富士重工業、ユニ・チャームとガンホーの3社だ。

 ガンホーは、株式を10分割したにもかかわらず株価は160万円を突破したのである。分割前に換算すると1株1633万円になる。1年前の12年5月15日の安値は14万2700円だったから、1年間で株価は114倍に暴騰したことになる。その後、株価は5月21日に22万7000円安(18%安)の103万4000円となった。高値から60万円近く下げたわけだが、それでも時価総額は1兆円を超えていた。

 ところが5月23日の東京株式市場の暴落の連鎖でガンホーの株価は17万円安(15.5%安)の93万円まで下げた。営業日数で約1週間で高値から70万円下げた計算。高値からの調整率は4割を超えた。

 むろん自然に株価が上昇したわけではない。そこには孫社長によるガンホー株価の引き上げ大作戦があった。

 ガンホーは98年7月、米国のオークションサイトとソフトバンクの合弁会社、オンセールとして発足。孫正義社長の弟、孫泰蔵氏が初代社長で、現在は会長を務める。

 泰蔵氏は福岡県の久留米大学附設中学・高校を経て東京大学経済学部卒。中学・高校時代の同級生にライブドア元社長のホリエモンこと堀江貴文氏がいる。

 しかし、オークション事業は軌道に乗らず撤退。02年8月、韓国のゲーム会社から国内営業権を獲得しパソコン向けオンラインゲームに業種転換。現行の社名、ガンホーに変更した。05年3月に大証ヘラクレス(その後ジャスダックと統合)に上場。当初は人気を集めたが、その後は長期低迷が続く。ソーシャルゲームで急成長を遂げるDeNAやグリーに株価で大差をつけられ影が薄かった。

 鳴かず飛ばずだったガンホーが大化けしたのは、12年2月に提供したスマートフォン(スマホ)向けゲーム「パズル&ドラゴンズ」(通称パズドラ)がヒットしたことによる。パズドラはモンスターを育て、パズルでバトルするゲーム。パズドラの人気が高まってきたのを好機到来と判断したのが孫社長である。

 これにより株価を上昇させる3本の矢作戦が作動した。

 1本目の矢がはなたれたのは2月14日。ガンホーの12年12月期連結決算と株式の10分割を発表した。売上高は前期比2.7倍の258億円(その前の期は96億円)、営業利益は同7.9倍の92億円(同11億円)、当期利益は同4.9倍の82億円(同16億円)。市場の事前予想を大きく上回る決算に市場関係者は仰天した。

 同時に3月末を基準日として1対10の株式分割を実施すると発表した。ここから株価の暴騰劇が始まる。

 2本目の矢は、3月25日にソフトバンクは持ち分法適用会社であるガンホーを4月1日付けで連結子会社にすると発表した。ガンホーの筆頭株主はソフトバンクBB(議決権ベースの保有株比率33.63%)、第2位はハーティス(同18.50%)、第3位はアジアングルーヴ合同会社(同14.47%)となっている。

 ソフトバンクの孫社長が、弟の泰蔵氏の資産管理会社である第2位株主・ハーティスとの間で、同社が持つガンホー株式の議決権行使の委任を受けた。次にソフトバンクの子会社ソフトバンクモバイルが、泰蔵氏が代表社員を務める第3位株主・アジアングルーヴが持つ株式のうち、6.37%を上限にTOB(株式公開買い付け)を実施する。買い付け価格は1株34万276円、投資額は250億円。

 これによりソフトバンクグループは、ガンホー株式の保有比率(議決権ベース)を33.63%から58.50%に引き上げ、ガンホーを連結子会社にした。

 3本目の矢は、5月9日、13年12月期第1四半期(1~3月)連結決算と株式分割を発表した。売上高は前年同期比9.4倍の309億円(前期は32億円)、営業利益は同75倍の186億円(同2億円)。パズドラの人気で、わずか3カ月で12年1年間の売り上げを上回ったわけだ。パズドラの収益が営業利益全体のおよそ9割を占めた。

 同時に6月末を基準日として1対10の株式分割を実施すると発表した。これにより、3カ月間で株式が100分割されることになる。

 株式の100分割を株価高騰を生み出す錬金術として使ったのが、堀江貴文氏が率いるライブドアだった。03年11月19日に100分割を発表した日の株価212円(終値)が2カ月後には1802円(同)と、8.5倍に高騰した。ライブドアを真似た大幅な株式分割が流行り、100~200分割をする新興企業が相次いだ。

 孫社長が仕掛けた3本の矢作戦は見事に的中した。10分割を発表した2月14日の株価は157万4000円(終値)、分割前日の3月26日には415万円(終値)と2.6倍に上昇した。5月9日、さらに株式の10分割を発表。5月14日には155万円(終値)に高騰した。分割前に戻して計算し直すと1株1550万円である。2度の株式分割で株価は9.8倍になったことになる。

 安倍政権の経済政策アベノミクスによる株式市場のにぎわい、スマホ向けゲームのパズドラの大ヒット、それに株式100分割のトリプル効果でガンホー株は暴騰した。

 最大の受益者は、仕掛け人のソフトバンク孫正義社長だった。ソフトバンクは2014年3月期第1四半期(13年4~6月)から国際会計基準(IFRS)を適用する。ガンホーを連結子会社にしたのに伴い、「既存の投資持分について公正価値による再測定を行った結果、1500億円の利益を計上する」と発表した。ガンホー株の高騰で1500億円の含み益が生じたという意味だ。250億円のTOB資金を投じて得た利益は1500億円。わずか数日で6倍のリターンを得た。ノーリスク・ハイリターンとはこのことだ。

 ガンホーを連結子会社にしたことで1500億円の利益の押し上げ効果が発生し、営業利益は初めて1兆円の大台を突破する。
(文=編集部)

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最終更新:2013/06/04 07:00
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