中田秀夫VSクドカン“団地映画対決”勃発!? 『クロユリ団地』『中学生円山』
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今週紹介する新作映画は、若い女性が体験する恐怖を描くホラーと、中2男子の妄想と現実が交錯する思春期コメディ。ジャンルは違えど団地が物語の舞台となる邦画2作品が、奇しくも5月18日に同日公開されることから、“団地映画対決”という見方もできそうだ。
1本目の『クロユリ団地』は、ジャパニーズホラーの旗手・中田秀夫監督が前田敦子と成宮寛貴を主演に迎えて描く戦慄の最新作。介護士を目指す明日香(前田)は、毒々しい色の花に囲まれたクロユリ団地に引っ越してきた。入居早々、隣室からの不気味な音に悩まされ、級友からは「幽霊が出る団地」とのウワサを聞き、不安を募らせる明日香。やがて隣室で孤独死した老人を発見してしまい、その日を境に不可解でおぞましい出来事に巻き込まれていく。明日香は、老人の遺品整理にやってきた青年・笹原(成宮)の助けを求めるが……。
90年代の『リング』シリーズ、ハリウッド進出作『ザ・リング2』(05)で日本テイストの新感覚ホラーで世界に名を馳せ、近年は『L change the WorLd』(08)、『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』(10)などジャンルを超えて活躍してきた中田監督が、久しぶりに本格ホラーに帰ってきた。元AKB48の前田敦子の主演作ということもあってか残酷描写などは控えめだが、映像の色調や照明、音響などでじわじわと不安感をあおる演出は健在。老巧化した団地の描写に、希薄な近所付き合い、孤独死といった社会問題も折り込まれるなど、現代の日本に「あり得そうな恐怖」を体感できるはず。
もう1本の『中学生円山』は、演劇・テレビ・映画とマルチに活躍する“クドカン”こと宮藤官九郎の、『少年メリケンサック』(09)以来4年ぶりとなる監督作。団地の中で平凡な家族に囲まれて育った中学2年生の円山克也(平岡拓真)は、あるエッチな目的を達成するため、極限まで身体を柔らかくする「自主トレ」に励んでいた。そんなある日、上の階に謎めいたシングルファーザーの下井(草なぎ剛)が引っ越してくる。ほどなくして団地の近くで殺人事件が発生。克也は下井の正体が殺し屋だと妄想し始める。
今でこそNHKの朝ドラ『あまちゃん』の脚本を担当するなど、上品なユーモアで包んだストーリーもお手のものだが、もともとは下ネタ含む過激な笑いと風刺で人気の劇団、大人計画の主要メンバーとして成功したクドカン。自らの中学時代の体験や妄想を脚本に盛り込み、淡々とした団地と学校での日常と、エロありアクションありの過剰な妄想が小気味よく切り替わるストーリーに仕立てた。共演陣も仲村トオル、坂井真紀、遠藤賢司、ヤン・イクチュンと豪華で、皆川猿時、三宅弘城、宍戸美和公ら大人計画でおなじみの面々も。エッチなネタがなぜか感動エピソードに昇華したり、平凡なはずの団地で現実に銃撃戦あり格闘ありのアクションが繰り広げられたりと、クドカンワールドが全開の本作は、最後まで目いっぱい笑えて少しほろ苦い青春映画の傑作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『クロユリ団地』作品情報
<http://eiga.com/movie/77733/>
『中学生円山』作品情報
<http://eiga.com/movie/77240/>
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