美しさを求めるあまり“怪物”と化した哀しい女『モンスター』の高岡早紀が見せた女の情念!
#映画 #パンドラ映画館
見た目で人を判断する現代社会の軽薄さを呪う。
だが、そんな彼女自身が誰よりも外見を気にした。
チキショーッ! チキショーッ! 整形手術を終えたばかりの女は、窓ガラスに映った自分の姿を見て腹の底から絞り出すように叫んだ。整形手術に失敗したから叫んでいるのではない。8万4,000円の費用で二重まぶたにする手術は成功した。それまでのゴツゴツした岩にできた裂け目のようだった一重まぶたが、少女漫画のヒロインのような愛らしいツブラな瞳に変わったのだ。どうして家族は整形手術を勧めてくれなかったのだろう。なぜ自分はもっと早く気が付かなかったのだろう。故郷でモンスターと呼ばれ、暗黒の青春時代を過ごしてきた女は、家族への憎しみ、自分自身の無知さ、世間の不条理さに対する怒りが混然となり、血を吐くように叫び続けた。そして吐き出された感情の中には、これから自分の人生は変わるかも知れないというひと筋の希望と自分をさんざん笑いものにしてきた人間たちへの復讐心が芽生え始めていた。高岡早紀主演の『モンスター』は整形手術によって別人へと生まれ変わろうとするひとりの女の情念を描いたサスペンスタッチの物語だ。
百田尚樹氏の小説『モンスター』は、醜い容姿に生まれつき、心を閉ざしたまま育った女性・和子が主人公。整形手術によって自信を得た和子は、様々な職業と男たちの間を変遷していき、美貌と知性を磨いていく。いわば歪んだ形のビルドゥングスロマンスだ。主演の高岡早紀は毎日2時間かけて特殊メイクを施し、撮影現場を訪問した原作者の百田氏が直視できないほどの異形の顔でヒロイン・和子の悲惨な日々を熱演した。生まれつき醜い和子は整形手術を重ねることで人工的な美しさを手に入れていくが、高岡の場合は逆に特殊メイクで顔を隠した状態からシーンが進むにつれて自分の素顔に戻っていく。美しさを手に入れて、コンプレックスから解放されていく和子の言動の数々には女性の本音が込められているようでゾッとさせられる。
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