“ガラパゴス化”する日本のマイナスイオン家電 薄い効果でも誇大広告が横行の実態
#家電 #シャープ
サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。
■「Business Journal」人気記事(一部抜粋)
警察は元関東連合の構成員8割を特定か 凶悪事件続発で半グレから準暴力団へ認定
ソフトバンク、12年度の携帯電話契約純増数で首位 ドコモは3位転落
「明日会社が潰れるかも……」“一寸先は闇”となった現代社会を生き残る術とは?
■特にオススメ記事はこちら!
“ガラパゴス化”する日本のマイナスイオン家電 薄い効果でも誇大広告が横行の実態 – Business Journal(4月6日)
(「同社HP」より)
●なぜ掃除機にイオン発生機が?
2012年11月、シャープのプラズマクラスター掃除機が消費者庁から景品表示法に違反するとして措置命令を受けた。掃除機の性能に問題があったわけではない。搭載されたプラズマクラスターイオン発生機に関するカタログやウェブサイトの表示が、一般消費者に「著しく優良」と思わせるものと判断されたのだ。消費者庁からは、景品表示法違反について消費者に周知徹底し、再発防止を講じるなどの命令を受けている。
【景品表示法違反の対象となった機種一覧】
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/121128premiums_1.pdf
そもそも、なぜ掃除機にイオン発生機が必要だったのか?
アレルギーや花粉症の対策として、室内の掃除をすることは有効だ。むしろ、ダニの死骸や花粉などは、常に空気中を浮遊しているわけではない。どちらかといえば、じゅうたんの上や家具の隙間などにたまりやすいため、空気清浄機よりも小まめに掃除したほうが効果的だとされている。
今回問題となったシャープの掃除機は、「掃除と一緒にイオンを放出して、同時にアレルギー物質をやっつけてしまえばいい」という観点で、商品企画されたのかもしれない。しかし、イオンの効果が確認できるとしても、それはイオンの届く限られた範囲のこと。加えて、掃除機なんて1日のうちに稼働している時間は長くなく、そんな短い時間にイオンを発生させてもそれほど効果がない。
●日本で独自に進化したマイナスイオン家電
シャープに限らず、イオン発生機能を搭載した電化製品はいくつも出ている。もともと空中のホコリを帯電させて吸着する空気清浄機等の空調機器は昔から存在していたが、イオン式が急増したのは1990年代後半からの「マイナスイオン」ブームの頃だった。
最初は滝周辺の大気中に存在する「マイナスに帯電したイオン」が「健康にいい」という話が出てきた。さらにはトルマリンなどの鉱物からも「マイナスイオン」は発生すると言われるようになる。すぐさま「いったい何のイオンなのか?」「どのような効果をもたらすのか?」などの疑問が研究者たちから投げかけられたものの、テレビや雑誌などのメディアを通じて、お茶の間へ広まっていった。
このブームに乗るかたちで、大小の家電メーカーは「マイナスイオン」の名をつけた電化製品を発売するようになる。空気清浄機やエアコン、それにヘアドライヤーは、瞬く間に「マイナスイオン機能搭載」が標準装備となった。
さらに冷蔵庫などにはもちろん、2002年には日立のパソコン「プリウス」にもマイナスイオン発生機が搭載されるなど、関連商品は激増。日経新聞の「ヒット商品番付」でも、同年上半期の小結に「マイナスイオン家電」がランキングされるほどだった。
ただし、このブームは日本国内だけのものでしかない。「大気イオン」による健康効果などの古い研究やイオン式空気清浄機はあるものの、日本のような、「とにかくイオンを出しておけば健康にいい」という現象は起きてはいないのだ。いわば、日本国内だけで独自に進化した「ガラパゴス家電」と言っていいだろう。
むしろ、イオン式空気清浄機は、欧米ではオゾンを発生するものとして規制の対象になることもある。アメリカではシャーパー・イメージ社のイオン式空気清浄機「イオニック・ブリーズ」がベストセラー商品となったが、生活情報誌「コンシューマー・レポート」がイオンに効果がない上、有害なオゾンを発生させると報じたことで売れ行きも激減、08年に倒産するという騒動も起こった。
このことを考えれば、オゾンの発生を抑えることは世界的な標準となるだろうが、日本では低濃度とはいえオゾンを発生させる機器をあちこちの家電製品に組み込み、家じゅうをオゾンだらけにしてしまいそうな勢いで増やしているのだ。これは明らかに、日本独自の進化=ガラパゴス化と言っていいだろう。
●新型インフル騒動で、イオン系電化製品が次々登場
2000年代に入ってからマイナスイオンブームが沈静化していくなか、シャープの「プラズマクラスターイオン」やパナソニックの「ナノイー」といった、各社独自技術でイオン系物質を放出するデバイスが開発されていった。
次の転機は、メキシコに端を発したH1N1亜型新型インフルエンザが流行し、日本でも感染者を出した09年だった。この年、国内の前年度の空気清浄機出荷台数は急増、イオン発生機能付きの電化製品も次々に開発されるようになった。
この年、シャープから発売されたのが、プラズマクラスター発生機付きのデジタル複合機だった。
だが、コピー機やレーザープリンターなどからは、もともとオゾンを発生することが知られており、1996年11月に制定されたエコマークのガイドラインでは、オゾンの放出について室内空気中の濃度が1立方メートル当たり0.02mgを超えないとする基準が設けられた(2000年12月に通常の使用で問題ないレベルまで改善されたとしてガイドラインから削除)。
イオン発生機はイオンと同時にオゾンも発生する。ということは、これまで一生懸命努力して削減してきたコピー機やプリンターから発生するオゾンを、わざわざまた追加していることになる
ただし、こうした迷走に陥っていたのは、シャープだけではない。パナソニックではナノイー機能搭載のテレビを発売している。撤退の噂が絶えないプラズマテレビにも搭載されているが、「静電霧化方式のナノイーを搭載しなくても、プラズマ放電でイオンやオゾンも出ているのではないか」という指摘がされている。
そのほかにも、富士通はパナソニックからナノイー発生機の供給を受けたパソコンを発売した。また、プラズマクラスター搭載のLEDシーリングライトや、ナノイー搭載の玄関ドア用室内額縁、便器内をイオンで浄化するシャワートイレなどなど、イオン系家電の輪はどんどん広がっていっている。
●ガラパゴス家電の答えはどこに?
シャープやパナソニックがどんなに批判されようと、空気清浄機も、掃除機も、エアコンも、複合プリンターも、性能自体は悪くない。むしろ、これだけの製品を開発できるポテンシャルは評価されてしかるべきだ。イオン発生機を搭載することにこだわることを除けば。これまで、多くの科学者・研究者から、狭い閉鎖空間で見られる効果は実生活空間並みの広さでは確認できない、第三者による実証データが乏しい、などの指摘もされてきた。さらに、効果そのものが、イオンよりもオゾンによるものではないかという異論も出て来ている。この状況は、マイナスイオンのブームが起きた10年以上も前とあまり変わらない。こうした疑問に対し、なかなか納得できる答えが出されないまま、製品が売られ続けているのだ。
消費者庁から措置命令を受けたシャープは、すでにカタログやウェブの表示を修正しているが、11月28日の自社ニュースリリースでは、問題は「カタログ等での表示に関するもの」であり、「プラズマクラスター搭載製品の性能について、問題とされているものではありません」と明記している。
(http://www.sharp.co.jp/corporate/news/121128-b.html)
だが、消費者庁の措置命令に関するニュースリリースにも、はっきりこう記されている。
「対象商品は、その排気口付近から放出されるイオンによって、対象商品を使用した室内の空気中に浮遊するダニ由来のアレルギーの原因となる物質を、アレルギーの原因とならない物質に分解又は除去する性能を有するものではなかった」
消費者庁が指摘しているのは、確かに「カタログ等での表示に関するもの」だが、同庁では専門家のヒアリングや実証試験などを行った上でこの結論に至ったものであり、かなり慎重に検討した結果であるとみていい。
以前からマイナスイオン関連について厳しい批判を繰り返してきた研究者の一人は、「消費者庁もプラズマクラスターそのものの是非に踏み込んでほしかった」と話す。
その試験のデータなどが公表されれば、問題はクリアになるはずだ。しかし、消費者庁の担当者は、措置命令を受けた業者が異議申し立てをして提訴しない限り、実際に検証したデータは公表しないという。
(文=六本木博之/フリーライター)
■おすすめ記事
警察は元関東連合の構成員8割を特定か 凶悪事件続発で半グレから準暴力団へ認定
ソフトバンク、12年度の携帯電話契約純増数で首位 ドコモは3位転落
「明日会社が潰れるかも……」“一寸先は闇”となった現代社会を生き残る術とは?
西武HDへTOBのサーベラス、記者会見でも「友好関係望むが強行手段」の疑問に答えず
明日の矢部浩之&青木裕子結婚式生中継について、岡村「放送時間内に収まり切らない」
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事