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6つの物語が響き合う、2時間52分のSF超大作『クラウド アトラス』

clamovie.jpg(C)2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. / Photo Credit: JAY MAIDMENT

 アカデミー賞候補作や受賞作のような傑作や、安心して見られるウェルメイドな娯楽作もいいが、たまには毛色の違う映画も試したいという向きに、今週は実験精神あふれる意欲作2本を紹介しよう。

 3月15日に封切られる『クラウド アトラス』は、英作家デビッド・ミッチェルの同名小説を、『マトリックス』3部作のラナ&アンディ・ウォシャウスキーと『ラン・ローラ・ラン』(99)のトム・ティクバが3人で監督を務めて映画化した壮大な物語。19世紀から文明崩壊後の24世紀まで、6つの時代でそれぞれの人生を生きる男(トム・ハンクス)が、同様に生まれ変わる数人の男女と関わりながら、数奇な運命をたどる。男は24世紀のハワイで、進化した種族の使者メロニム(ハル・ベリー)と出会い、人類の未来を決する重大な選択を迫られる。

 腹黒い老医師から誠実な原発従業員、下品で暴力的な作家、平和主義のヤギ飼いまで、年齢も性格も異なるキャラクターを巧みに演じ分けるトム・ハンクスの名人芸が楽しめる。ほかにもヒューゴ・ウィービング、ジム・スタージェス、ペ・ドゥナ、スーザン・サランドン、ヒュー・グラントら豪華キャストが、それぞれ特殊メイクの助けも借りて各時代のキャラを熱演。輪廻思想をベースに、哲学的な要素、社会思想史や文明批判の側面、『マトリックス』に似たディストピアなどを盛り込みつつ、歴史ドラマ、近未来SF、サスペンスアクションなど多様なジャンルの手法を組み合わせて壮大な世界観を築き上げた。現在、過去、未来を何度も行き来する複雑な構成だが、パートの切り替えが絶妙で、各エピソードを結びつける設定も多々あり、2時間52分という長尺の上映時間を飽きさせない。

 もう1本の『キャビン』(公開中、R15+)は、『クローバーフィールド/HAKAISHA』の脚本で知られるドリュー・ゴダードの長編監督デビュー作。女子大生のデイナ(クリステン・コノリー)は、カート(クリス・ヘムズワース)ら若者5人で連れだって山奥の別荘にやってくる。しかし、デイナたちの行動は謎の組織により監視されていて、事態がすべてシナリオ通りに進むようコントロールされていた。何も知らない若者たちはさまざまな恐怖に襲われ、1人ずつ命を落としていくが……。

 人里離れた山小屋を訪れた能天気な若者たちが、得体の知れない怪物や異常な殺人鬼によって順番に血祭りに上げられる――という設定はホラー映画の定番中の定番。ところが、そうした状況を監視しコントロールする組織を登場させたことで、『トゥルーマン・ショー』(98)や『キューブ』3部作のような「メタ視点」が加わり、がぜん面白みが増した。もちろん、若者たちが思惑通りに全滅しては味気ないので、後半には生き残った数人が組織に立ち向かう場面も用意されているのだが、その先も予想を越える驚愕の展開。既出のアイデアをうまく組み合わせることでオリジナリティあふれる映画が作れるという、お手本のような快作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『クラウド アトラス』作品情報
<http://eiga.com/movie/77223/>

『キャビン』作品情報
<http://eiga.com/movie/58143/>

最終更新:2013/03/15 21:00
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