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ホームレスは本当に減ったのか――支援の現場から考える『漂流老人ホームレス社会』

hyouryuhome.jpg『漂流老人ホームレス社会』
(朝日新聞出版)

 2003年、ホームレスが販売する雑誌「ビッグイシュー」の日本版が刊行。07年に漫才師の麒麟・田村裕が記した『ホームレス中学生』(ワニブックス)の大ヒットは、タレント本というジャンルを差し引いても、ホームレスに対する世間の興味を示している。08年末には、リーマンショックに伴って失業した非正規労働者らが、日比谷公園に設置された「年越し派遣村」で正月を迎えた。

 近年、一時期よりもホームレスについての話題を耳にしなくなったように感じる。厚生労働省による調査では、08年と比較して12年には、ホームレスの数が全国で40%減少している。ピークであった10年前と比較すると、その数は3分の1。人々がホームレス問題に注目し対応がなされた結果、状況は改善。いまだに問題は残るものの、事態は徐々に改善に向かいつつある……。このデータを素直に読み取るなら、そういうことになるかもしれない。

 だが、ホームレス支援団体「TENOHASI」の代表を務める精神科医・森川すいめい氏の著書『漂流老人ホームレス社会』(朝日新聞出版)には、こう明記されている。

「ホームレス問題がこのまま解決すると思っている人はいない」

 TENOHASI代表として、池袋駅を中心に夜回りや炊き出しなどの支援を行う森川氏。本書では、その支援の中で出会ったうつ病、認知症、アルコール依存症、DV、知的障害、統合失調症などのホームレスの支援の実態を描きながら、そこで直面する問題を浮かび上がらせている。

「ホームレスとは、単に家(ハウス)がない状態をいうのではない。安心して生きていく場(ホーム)がない状態をいう。みんなが平等であることを前提とする社会は、人間を、ホームレス状態に押しやる」

と森川氏は書く。12年の調査で、ホームレスの平均年齢は59.3歳。60歳以上の高齢者が半数以上を占め、70歳以上でも全体の10%を超える。彼らは、ついのすみかとして路上を選ばざるを得なかった。だが、路上にすら居場所をなくしたホームレスも少なくない。近年、ベンチには眠れないように仕切りが設置され、公園は夜間閉鎖されるようになってきているのだ。

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