シリーズ屈指の火薬量と破壊量で刺激満点『ダイ・ハード ラスト・デイ』
#映画
「9.11」から10年以上たった今も世界で続くテロとの戦いを、ド派手な娯楽アクションと実話ベースのサスペンスドラマという、好対照な手法で描く話題の新作映画2本を紹介しよう。
2月14日公開の『ダイ・ハード ラスト・デイ』は、ブルース・ウィリスの代表作である大人気シリーズの第5作。ニューヨーク市警のマクレーン刑事(ウィリス)は、ロシアで投獄された息子ジャック(ジェイ・コートニー)の身柄を引き取るためモスクワへ降り立つ。だが、ジャックが政治犯コモロフと共に出廷する裁判所にマクレーンが到着した途端、大規模なテロ事件が発生。コモロフを誘拐しようとするテロ組織の陰謀を阻むため、マクレーンはジャックと協力し異国の地で奮闘する。
監督は『エネミー・ライン』(01)やリメイク版『オーメン』(06)のジョン・ムーア。カスタム仕様の耐地雷防護車や多用途軍用車ウニモグがハイウェイの一般車両をはね飛ばしながら爆走する序盤の驚愕チェイスシーンから、マシンガンを掃射するシリーズお約束の銃撃戦、攻撃ヘリコプターも参戦する終盤の息詰まる攻防まで、シリーズ屈指の火薬量と破壊量で圧巻のアクションをテンポ良く見せてくれる。シリーズ3作目からはバディ・ムービーの要素が続いているが、本作のバディは「父と息子」。冒頭で反目し合っていた親子の関係が変化していく過程や、二転三転する人物関係の意外性など、最後まで目が離せない刺激満点の娯楽作だ。
2月15日公開の『ゼロ・ダーク・サーティ』は、国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンを追いつめたCIA女性分析官の執念と、ビンラディン暗殺作戦の裏側を、関係者の証言に基づいてサスペンスフルに描き出した作品。9.11テロ後に姿を消したビンラディンを追って、CIAは巨額の予算をつぎ込むが、手がかりを得られないまま2年が過ぎた。そしてCIAは、若く天才肌の女性分析官マヤをパキスタン支局に派遣する。マヤはやがて、ビンラディンの連絡係と思われる男の存在をつかみ、さらには地方都市アボッターバードに高い壁で囲まれた要塞のような豪邸を発見する。
『ハート・ロッカー』(06)でアカデミー賞6部門を受賞したキャスリン・ビグロー監督の最新作で、本作も同賞5部門にノミネート。主演のジェシカ・チャステインは、心理戦を駆使して捕虜から情報を引き出し、同僚を自爆テロで失う悲劇に打ちひしがれ、時には表情を歪めて上司に激しく食ってかかるマヤを熱演した。終盤の急襲作戦のシーンは、暗視ゴーグルの視野を模倣した映像も活用され、観客自らがネイビーシールズの隊員として現場に突入しているかのような迫力だ。ビグロー監督は、サスペンスとアクションの演出で「テロとの戦い」をドラマチックに描きながらも、捕虜虐待や報復戦など戦争がはらむ問題を可視化して私たちに提示している。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『ダイ・ハード ラスト・デイ』作品情報
<http://eiga.com/movie/57678/>
『ゼロ・ダーク・サーティ』作品情報
<http://eiga.com/movie/77732/>
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