“駐在員の下僕”海外現地採用社員の実態〜コストカット要員、そのまま最下層へ…
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“駐在員の下僕”海外現地採用社員の実態〜コストカット要員、そのまま最下層へ… – Business Journal(2月12日)
停滞する日本に見切りをつけ、海外に活路を見いだすーー。
転職希望者の間で、「現地採用」、通称「現採」が人気だ。
本社から海外に派遣される駐在員になるには、商社やグローバルなメーカーの正社員になるしかないが、そのハードルは驚くほど高い。でも、海外で働くことをあきらめきれない……。そんな人が、現採にピッタリはまるのかもしれない。最近では海外での転職を斡旋するエージェント(人材紹介会社)も増えているから、日本にいながらにして現採案件が探せる手軽さも、“現採人気”を後押しする。
しかし、だ。現地採用は、そんな甘いものじゃないと苦言を呈する人事関係者は多い。人事コンサルティング会社・wealth shareの代表取締役鈴木智之氏も「結論から言って、現採は絶対にやめたほうがいい」と断言する。
「理由はただ1つ。駐在員と現採では、身分が違うからです」
給料1つとっても、“身分差”は歴然だ。
例えば、商社の海外駐在員は、ただでさえ高い本邦給与と海外給与が2本建てで支給され、国内で働く場合のおよそ2~3割の上乗せ分が期待できるのに対し、アジア諸国の現採日本人の給与は、日本円にして9万円~17万円が目安。
さらに駐在員は、社宅として借り上げた現地最高クラスの住居を、メイドと運転手付きであてがわれ、接待費など経費も使い放題なんて場合も多々あるが、現採日本人は年金や雇用保険などの福利厚生さえ、あまり期待できない。
●使用人扱い
その上、中にはあからさまに現採日本人を見下す駐在員もいる。
「東南アジアだと駐在員が2~3人しかいない拠点も多く、そのわりに1人の裁量が大きいため、天狗になってしまう人が多い。そのため、現採日本人に『俺は100メートルも歩かないから、車を出せ』だとか、『書類はメールで送りつけるな! 俺の席まで持参しろ』などと言って、使用人扱いする駐在員もいるにはいます」(食品メーカー元駐在員)
仕事内容も、本社駐在員と現採日本人では、まるで違う。本社から来る駐在員は、会社の経営戦略の1つとしての現地事業という枠で、ダイナミックな仕事ができるのに対し、現採日本人は現地職員の取りまとめ程度の仕事しかさせてもらえない。
「あるグローバル企業の現採日本人が、本社幹部とテレビ会議したところ、『君たちはしょせん小さなマーケットの現地スタッフなのだから、こぢんまりした戦略より、もっと思い切ったことをしなさい。君たちの市場を失っても、本社はまったく痛くもかゆくもないのだから』とハッキリ言われたことさえあるそうです」(鈴木氏)
現地支局の業績が振るわなければ、あっという間に本社スタッフが「再建」あるいは「撤退」しにやってきて、現採日本人の出る幕がないどころか、正社員ではないだけに、あっけなく解雇されることも多々あるという。
●クビを切られ、帰国もままならない
クビを切られ、失意のまま日本に帰国といっても、帰りの旅費さえ出ない会社もある。また、「故郷に錦を飾る」つもりで日本を後にしているだけに、おいそれとは帰国できず、「そのまま現地の下層階級へと沈んでいく人も多い」(食品メーカー元駐在員)。
現採組は雇用保険に入っていない場合が多いため、失業保険の給付さえ受けられないから、失業期間をしのぐには、かなりの貯金がないときつい。さらに言うなら、転職もそう容易ではないという。
「現地採用は、しょせん現地採用。どれだけ優秀だろうが、現地の事業や言語に精通していようが、現地採用という枠からは出られません。本社組になりたいと言っても、人事部に『しょせん、現地採用なんでしょ?』と扱われるだけです」
そもそも現採日本人は、駐在員と比べて給料が安い「コストカット要員」だからこその使い勝手があったわけで、そこからのキャリアアップは、かなり難しいようだ。
自分が好きな土地に住み、好きな文化に触れながら仕事をするのが幸せ、といった価値観で現採日本人として働くのは有意義かもしれないが、「世界を股にかけて活躍する第一歩に」なんて野心から現採を目指すのは、無謀かもしれない。
(文=佐藤留美)
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