トム・クルーズの新シリーズ誕生か 危険でワイルドな新世代ヒーロー『アウトロー』
#映画
今週紹介する新作映画2本はジャンルこそ違えど、日常の裏側で進行している(かもしれない)特殊な世界を、今まさに眼前で展開しているかのようにリアルに見せてくれる意欲作だ。
2月1日公開の『アウトロー』は、英国発の人気ハードボイルド小説を、トム・クルーズ主演、『ユージュアル・サスペクツ』(95)のクリストファー・マッカリー監督・脚本で映画化したサスペンスアクション。米地方都市郊外で白昼、川沿いに居合わせた5人が、対岸から放たれたライフル弾で射殺される事件が発生。現場に残された多くの証拠から、元米軍スナイパーで前科のある男が逮捕される。だが、元陸軍捜査官のジャック・リーチャー(クルーズ)は、無差別殺人に思われた事件の不審な点に気づき、独自の調査で巨大な陰謀に迫ってゆく。
トム・クルーズの当たり役といえば『ミッション:インポッシブル』シリーズの諜報部員イーサン・ハントだが、本作のリーチャーは組織に属さない一匹狼で、正義のためなら法を破ることさえ辞さない流れ者という人物設定がミソ。クルーズが自ら運転して演じたカースタント、比較的新しく今も進化を続ける格闘術「キーシ・ファイティング・メソッド」に基づく格闘シーンなどのソリッドな迫力も相まって、危険でワイルドな新世代ヒーローが誕生した。凛々しい女弁護士役のロザムンド・パイクや、ひょうひょうとした射撃場経営者役のロバート・デュバルとの掛け合いが、ストイックな展開の中にも一服のユーモアを添えていい味。原作者リー・チャイルドによる『ジャック・リーチャー』シリーズはすでに17冊刊行されており、映画続編の製作も大いに期待される。
続いて、2月2日に封切られる『R-18文学賞 vol.1 自縄自縛の私』(R15+指定)は、竹中直人が監督7作目にして初めて挑んだ官能作品。平凡な家庭で育った百合亜(平田薫)は、大学時代に縄で自らを縛る趣味に目覚める。恋人に知られたため数年間封印していたが、勤め先の広告代理店で上司や部下への不満が募り、ストレスから逃れるように自縛を再開。自宅だけでなく、縄をしたままスーツを着込んで出勤するなど、次第に自縛のシチュエーションをエスカレートさせる。
原作は、新潮社主催の公募新人文学賞「女による女のためのR-18文学賞」を受賞した蛭田亜紗子のデビュー小説。本来は比喩的な意味で使われる四字熟語を文字通りに実践して自らを縛りつけ、その不自由な状況に快楽を覚えるという倒錯したマゾヒスティックな世界が、原作のポップで瑞々しい感覚そのままに再現された。共演に安藤政信、お笑いコンビ「ピース」の綾部祐ニ、津田寛治、つみきみほ、杉本彩ら。ハードコアなマニアには少々物足りないかもしれないが、不良中年テディベアが下ネタを連発する『テッド』が先月公開され予想外に女性客を動員して大ヒットしていることから、本作もまた女性層やカップルに大きな反響を呼びそうだ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『アウトロー』作品情報
<http://eiga.com/movie/57490/>
『R-18文学賞 vol.1 自縄自縛の私』作品情報
<http://eiga.com/movie/57973/>
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