AKB映画の監督・高橋栄樹インタビュー メンバーに語らせたスキャンダルの真相
#映画 #AKB48
── 公開前日にメンバーの峯岸みなみが熱愛報道を受けて丸刈りにし、試写の時点では編集中と伏せられていた板野友美の「卒業」が劇中で発表されるなど、話題を呼んでいるAKB48ドキュメンタリーの最新作『DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN~少女たちは涙の後に何を見る?』。アイドル映画の最新型ともいえるメタフィクション型の最高峰を極めたAKB48ドキュメンタリーの監督、高橋栄樹氏にインタビューを決行!アイドル映画のタブーを次から次へと破るAKBドキュメンタリー、その舞台裏とは?
──ファンの間では「唯一叩かれないAKBの映像を撮る監督」として崇められ、2月1日より公開されているAKB48(以下、AKB)のドキュメンタリー映画第3弾『DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN~少女たちは涙の後に何を見る?』も手がけた高橋監督ですが、そもそも、AKBを撮ることになったきっかけはなんだったのでしょうか? 高橋監督といえば、THE YELLOW MONKEYの”第5のメンバー”と呼ばれ、「SPARK」や「楽園」をはじめとした、ロック系ミュージックビデオ(以下、MV)のイメージが強いですよね。
高橋 実は僕、アイドルMVを撮ったことはまったくなくて。たまたま仲の良かった友人がデフスターレコーズ【編註:07年当時、AKBが所属していたレーベル】の担当者と知り合いで、突然電話で「『秋葉原48』というグループがいるんですけど、興味ありますか?」って聞かれたんですよ。デフスターっていったら、ヒップホップとかR&B系のミュージシャンが多数所属しているイメージだったので、勝手に「UB40」【編註:イギリスのレゲエ・ポップバンド】的なグループが、石丸電気の上で「YO!」ってやってるようなところをイメージしちゃったんですよね(苦笑)。それで、なんの気なしに「はい、やります」と。
──ところが、ふたを開けたらアイドルだった(笑)。抵抗はありませんでしたか?
高橋 最初が「軽蔑していた愛情」(07年)っていういじめと自殺の曲だったから、シリアスに制作することができて、そういう部分では難しくありませんでした。この次のシングルが「BINGO!」(07年)という曲なんですけど、そっちは海辺の明るい歌だったんで。まぁ、後にそういう曲も撮りましたけど、もしそっちが最初にきていたら、僕には無理だったかもしれません(苦笑)。
当時、「センター」っていう概念もわかっていなくて、グループの中心人物が真ん中にいるということの重大さに気づいたのも、3本くらい撮ってからでした。だから、「軽蔑していた愛情」のセンターは高橋みなみさんなんですけど、MVの主役は大島優子さんなんですよね。秋元康さんからも「歌のメインはいるけれども、ドラマは撮影してみて良かったかものから選んでもらっていい」と言われていたので、とにかく画面から来るオーラのようなもので選んでいったんです。それが大島さんだった。
──初期から見てきて、変化の大きかった子はいますか?
高橋 いますね。特に前田敦子さんは、いろいろな意味でメキメキと変わっていきました。最初は、言われたことを黙々とやっていただけだったので、「この子はどうしたいんだろう」と思っていましたが、段々感情表現がうまくなってきて、それがスキルとしてビルドアップされていった。その点は、渡辺麻友さんも同じです。渡辺さんを初めて撮った「夕陽を見ているか?」(07年)では、総尺10秒も映していないんじゃないかな。その頃は正直、映像的に彼女のどこを使ったらいいかわからなかったんですよ。本当に普通の女の子だったから。
──メンバーから、もっと映してくれと言われたりは?
高橋 指原莉乃さんからはほぼ毎回、ネタのように言われてますね(笑)。とても悔しかったんでしょう、「大声ダイヤモンド」(08年)の時に初めて選抜に入ったけど、全然映っていなかったから。あの曲は、キングレコードに移籍して最初のシングルで、松井珠理奈さんと前田さん、この2トップで状況を打開したい……という勝負曲だったんです。だから指原さんをMVの中でフィーチャーする余裕がなかったんですよ。
──それが成功し、「大声ダイヤモンド」はAKBをブレイクさせる曲になりました。そこから一気にスターダムを駆け上がり、10年からは毎年ドキュメンタリー映画も上映されるわけですが……第1弾は岩井俊二さんが総指揮、寒竹ゆりさんが監督を務められましたよね。どういった経緯で第2弾から高橋監督が担当することに?
高橋 正直、経緯はまったくわからないんですよ。お話をいただいたのは11年の10月くらいで、本当に突然でした。ちょうど、じゃんけん大会の曲となった「上からマリコ」のMV編集をしている時に電話がかかってきて、3カ月で作ってくれと。
──かなり強行スケジュールですね。テーマはもともと決まっていたんですか?
高橋 最初に1度、秋元さんと打ち合わせさせて頂いて決めました。なんと言っても、11年は東日本大震災について語らない訳にはいかないだろうと。それで、被災地支援活動を通してAKBの存在意義を語ることになったんです。
──ただ、エンタメを撮るために震災を利用するな、という批判もありましたけど、それについては……
高橋 それは特に気にしませんでした。実際、被災地支援活動は現地の皆さんに楽しんで頂けてたと思うし、僕自身、地元が被災していたので、被害状況もある程度は分かっていました。ここに娯楽があったほうが絶対にいいという確信があったので、周りがどう言おうと気にしてもしょうがないと思って。
■菊地あやかに語らせた指原莉乃の処分
が行われた。この際、メンバーの板野友美が卒業を
改めて発表していた。(c)AKS
──前作に対して、今作は、よりプライベートを見せる内容でしたよね。過去に彼氏とのプリクラが流出して解雇され、研究生からやり直した経験のある菊地あやかさんに、HKT48への移籍するのみに留まった、指原さんの熱愛報道の処分についてどう思ったかと聞いたり。あれは、高橋監督のアイデアだったんですか?
高橋 そうです。今回のメインテーマは「センター」だったんですが、センターについて語ると、恋愛問題がついて回る。辞めた子、残っている子について、語らなければならないからです。AKBにおける「センターとは何か」を描くことはつまり、グループ内のヒエラルキーを描くことなんですよね。トップを描くということは、その下も、そこから出て行った人も描く必要がある。本人が喋るかどうかは、撮影の時になってみないとわかりませんでした。
──AKBのメンバーに率先して自らの恋愛問題について語らせていくというのは、戦略的なことなんでしょうか。
高橋 もちろん秋元さんにもご一考あると思いますが、撮影前にこちらから、「この内容は入れますか?」「ここは止めておきますか?」とお伺いを立てることはないんですよね。
──思春期の女の子たちですから、「ここは撮られたくない」と言われることはないですか?
高橋 正直、なくはないです。ただし、AKBにいる以上、オフィシャルで動いている時はカメラが回ることが約束ごとだから、仕方がない部分もあります。増田有華さんのパートで、翌日に発売される週刊誌を前に、スタッフと今後の進退について話をしているところも入れているんですが……あれは、運営のカメラが撮ったものなんです。増田さんもこの時はさすがに、「ここも撮るんですか?」と動揺していたようです。編集にも細心の注意を払ったつもりですが、本当に難しい。
(構成/林 永子)
まだまだ続く高橋監督のインタビュー!続きは「サイゾーpremium」で!
高橋栄樹(たかはし・えいき)
1965年、岩手県生まれ。大学生時代にウィリアム・S・バロウズに関するビデオアート作品『Alone at Last』を制作し、第2回ビデオテレビジョンフェスティバルでグランプリを受賞。凸版印刷入社後、MVを中心に映像ディレクターとして活躍する。「SPARK」や「楽園」など、THE YELLOW MONKEYのPVを数多く手がけ、”第5のメンバー”と呼ばれるようになる。映画監督としてのデビュー作品も、彼らの主演映画『trancemission(トランスミッション)』(99年)だった。
『DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN~少女たちは涙の後に何を見る?』
監督:高橋栄樹/出演者:AKB48/配給:東宝映像事業部
AKB48の2012年を振り返ったドキュメンタリー。今作は、前田敦子の卒業から「センター」の存在について改めて振り返りつつ、昨年起こった恋愛問題についても追っている。また、作中で人気メンバーの一人、板野友美が「卒業」を発表するなど、メンバーたちが「本音」を語る場としても活用されている。(13年公開)
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