“勘三郎タブー”と『聞く力』100万部突破のカラクリ
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“勘三郎タブー”と『聞く力』100万部突破のカラクリ – Business Journal(12月13日)
恋文である』(小学館)
12月13日発売の「週刊新潮」(新潮社)、「週刊文春」(文藝春秋)から、忙しいビジネスパーソンも要チェックの記事を早読み。今回はテレビが黙殺した「中村勘三郎さんの女性関係」と、あのミリオンセラー誕生の舞台裏に迫る。
12日には、北朝鮮が事実上のミサイルを発射、兵庫県・尼崎市の連続変死事件の主犯格とされる角田美代子容疑者が留置所で自殺。さらに今度の日曜日には、天下分け目の総選挙と、次々とニュースが入ってくる。来週に向け、週刊誌スタッフはさぞ忙しくなるだろう。だが、嵐の前の静けさというのか、今週の新潮、文春は共に少々おとなし目のネタばかり。そんな中、両誌が揃って注目しているのが、5日に亡くなった歌舞伎俳優・中村勘三郎さんの女性関係だ。
●太地喜和子から椎名林檎まで!
「女遊びは芸の肥やし」といわれる芸事の世界。最近では、市川海老蔵のモテぶりが注目されたが、生前の勘三郎さんには及ばないようだ。しかしながら、テレビやスポーツ紙などは美談ばかり。過去の女性関係についてあまり報じない。マスメディアには、“勘三郎タブー”が存在するのだろうか。
勘三郎さんは近年、テレビ業界に絶大な影響力を持つ芸能界の実力者=大手芸能プロ社長A氏の庇護下にあったといわれている。それ以前の1994年、勘三郎さんと不倫関係にあったとされる宮沢りえが、勘三郎さんの宿泊するホテルで自殺未遂を起こしたことがあった。この時、勘三郎さんはメディアから集中砲火を浴びた。その頃は“勘三郎タブー”は存在しなかったのだ。
しかし、ある芸能界の事情通によると「宮沢りえとの騒動のあと、勘三郎さんと無名女優のスキャンダルを「女性セブン」(小学館)がスクープしたことがあった。だが、当時の同誌編集長は、実力者A氏と昵懇だったため、勘三郎さんの個人マネージャーが、A氏ともつながっている大学の先輩に相談し、A氏にスキャンダルをもみ消してもらった。それ以降、勘三郎さんはA氏の影響下に置かれているのです」という。それゆえ、マスメディアは、勘三郎さんの女性問題が扱えないと思われるのだが、文春、新潮の両御大には無関係である。
両誌を読み比べると、勘三郎さんの女性遍歴で共通して名前を挙げているのが、太地喜和子、大竹しのぶ、米倉涼子、石川さゆり、椎名林檎。年齢からジャンル、タイプまで手広くカバーされている。さらに、新潮は今年5月、勘三郎さんの誕生日に銀座のバーで石川さゆりとデートをしていた様子、また椎名林檎と手をつないで歩く勘三郎さんの写真を掲載している。
この他にも、数多の女優と浮名を流した勘三郎さん。なんとも羨ましい限りだが、そのモテぶりの秘訣について、新潮は「子どものように純真な目で相手の目を見つめながら、相談に乗る。すごく聞き上手で、かつHなトークもうまい」という芸能デスクの声を紹介している。やはりモテる男性は聞き上手、下ネタ上手。勉強になる。
●「100万部突破」は最高の宣伝文句
続いては、文春で『この人に会いたい』という対談コーナーを20年間担当してきた阿川佐和子の著書『聞く力』(文春新書)が、100万部突破を記念して書かれたというオフレコメモを同誌が掲載している。が、同業者としてはオフレコメモよりも、「100万部突破」というほうに目がいってしまう。
「出版不況が叫ばれて久しい」なんていう枕詞はよく目にするが、オリコンが今月3日にウェブ通販を含む全国の書店からの実売データをもとに集計した「オリコン2012年年間“本”ランキング」によると、今年、単独書籍でのミリオンセラーは、08年の調査開始以来、初のゼロだったという。まさに本が売れない時代が加速している感は否めない。
そのオリコンのランキングでは、1位は『寝るだけ! 骨盤枕ダイエット』(福辻鋭記著/学習研究社)の79.2万部、2位が『聞く力』の約65万8000部となっている。またAmazonが発表した「2012年 年間ランキング 和書総合」では『DVD付き 樫木式カーヴィーダンスで部分やせ!』(樫木裕実著/学習研究社)が1位。美木良介の“ロングブレスダイエット”本は3冊合わせて100万部を突破、Amazonのランキングでも2位に入っている。時代は、完全にダイエット本なのである。
一方、出版取次大手トーハンが12月3日に発表した「年間ベストセラー 総合」では『寝るだけ! 骨盤枕ダイエット』ではなく、『聞く力』が1位を獲得している。うーん、どのランキングを信じればいいのか。
そんな中、今週に入り、『聞く力』が今年唯一の100万部を突破する本になったと各メディアが報じた。
しかし、この100万部とはなんなのか?
出版社が印刷・出荷した数=いわゆる発行部数なのか? 実際に書店で売れた数=いわゆる実売部数なのか? そもそも、出荷したところで実際に売れていなければ、ミリオンセラーというには無理はあるのではないだろうか。
文藝春秋新書編集部に聞いてみると、「100万部は発行部数です」との回答だった。
文藝春秋は、今回一気に『聞く力』を15万部増刷して、発行部数100万部を突破させた。かなりの“力技”だ。これについては「100万部突破をまったく意識していなかったわけではないです。ただ、年間1位ということが各メディアで報道され、結果的に書店からの受注が増えました。また、印刷所が年末年始休みなので、年明けの受注が追いつかなくなる可能性があるので、15万部増刷しました」(同社新書編集部)という。ちなみに、実売部数はまだ集計ができていないので不明とのこと。
“100万部突破”という冠をまずつくり、それを宣伝文句に実際に実売100万部を目指すというダイナミックな売り方は、さすがの文藝春秋。今年一番「売れた」本かどうかはまだわからないが、今年一番「刷られた」本であることは間違いない。
さて、阿川佐和子『この人に会いたい』に並び称される文春の長寿企画といえば、『淑女の雑誌から』。今回は、独身時代の逆ナンテクについての淑女の告白が目を引いた。こちらも要チェックです。是非、両御大をご購読あれ!
(文=本多カツヒロ)
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