日本人選手活躍の裏側で…欧州サッカーには金がない!?
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日本人選手活躍の裏側で… 欧州サッカーには金がない!? – Business Journal(12月12日)
ギリシャなど、欧州の重債務国から発生した「ユーロ危機」は、連日、新聞などのメディアを賑わせている。しかし、このユーロ危機の背後で、世界的に人気の高い欧州サッカー界が、財政危機に陥っていることを知る人は少ない。
1995年、欧州サッカー界にとっては衝撃の判決が下った。サッカー選手の「保有権」に関する訴訟で、「選手は契約終了後であれば、所属クラブの意向に関係なく移籍金(その選手を買い取るクラブが、所属元クラブに支払う金)なしで、自由にほかのクラブチームに移籍できる」というボスマン判決により、サッカー選手の移籍が自由化、移籍金も急騰し、クラブの財政が急速に悪化した。
09年にはポルトガルのフォワード、クリスチアーノ・ロナウドがイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドからスペイン・トップリーグのレアルマドリードへ移籍する際に、レアルが支払った移籍金は史上最高額の8000万ポンド(約130億円)にものぼった。
こうした選手の移籍金や給与の高騰により、選手の補強にかかった資金を回収できなくなったクラブチームが次々に経営破綻を起こす。02年にはイタリアのフィオレンティーナ、07年にはイングランドのリーズ・ユナイテッド、10年にはスペインのマジョルカ、12年にはスコットランドのレンジャーズなどが経営破綻した。
この結果、欧州サッカー界では、16億ユーロ(約1747億円)にのぼる巨額の負債を抱えるに至った。UEFA(欧州サッカー連盟)はこの状況を懸念し、欧州の各クラブに収支のバランスを取るように求める「ファイナンシャル・フェアプレー」というルールを13年のシーズン終了後に実施することにした。
しかし、問題は選手の移籍金や給与だけ止まらなかった。欧州ではサッカーの放映権が入札方式に変更されたことで、放映権獲得競争が激化、放映権料が高騰した。ユーロ危機の影響で企業の利益が減少し、広告収入が減収となっている欧州の各テレビ局では、高騰したサッカー放映権料を捻出するのが難しくなっており、地上波での欧州サッカーの放映が減少する事態に陥っている。
このままでは、地上波でのサッカー放映が減少し、場合によっては放映がなくなる事態が発生することが危惧されている。さらにはこれらが、サッカー人気の減少につながり、欧州サッカー全体の人気が下火となることにより、サッカービジネスの市場規模が縮小していく可能性が指摘されている。
それでなくても、ボスマン判決以降の移籍金の高騰で、欧州のサッカークラブは財政状況を改善するために、試合のチケット代金を値上げするなどの措置を実施しており、ユーロ危機で家計に不安を抱える欧州のサッカーファンに金銭的なしわ寄せが迫っている。
もちろん、12年の欧州サッカー界の市場規模は前年比で4.0%増と成長を続けており、同年の「世界のスポーツチーム資産価値ランキング」では、トップ10のうち、1位にマンチェスター・ユナイテッド、2位レアルマドリード、8位にバルセロナ、10位にアーセナルと4チームが入っている。
しかし、2010—11年シーズンの欧州のサッカーリーグ市場の成長率は、イングランドこそ前年比12.0%増加となったものの、ドイツとスペインは同5.0%、イタリアは1.0%、フランスに至っては3.0%の減少となっている。
ユーロ危機と同時に欧州サッカー界に危機の足音は着実に近付いてきている。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
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