後ろ盾中国共産党も敵に回り…「中国で一番有名な日本人」の闇
#中国 #Business Journal
サイゾー新ニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けしちゃいます!
■「Business Journal」人気記事(一部抜粋)
業界一人負けのマクドナルド ハンバーガー総選挙でもランク外!?
アップル参入で注目! グーグルが牛耳るデジタル地図業界
キンドルも値上げか…海外ネット配信企業への課税でどうなる?
■特にオススメ記事はこちら!
後ろ盾中国共産党も敵に回り…「中国で一番有名な日本人」の闇 – Business Journal(11月14日)
「週刊文春」(文藝春秋/11月8日号)
(ダライ・ラマ政権を支持する日本人は)「日本右翼勢力」
「中華文明は偉大であり、毛沢東は唯一無二の素晴らしい人物」
「胡錦濤主席の講話が体現する思想の深さに敬服」ーー。
これらは中国共産党のプロパガンダ文書の引用ではない。近年、日本でも盛んにメディアに登場している、通称「中国で一番有名な日本人」加藤嘉一氏が、中国国内で行ってきたとされる言動の数々だ。
加藤氏は、留学先の北京大に在学中から「カリスマ留学生」として中国国内でもてはやされ、国営放送である中国中央電視台(CCTV)などの国営メディアにもしばしば出演。2010年からは活動の舞台を日本国内に移し、現時点までの1年半で対談本や自己啓発本を含む8冊の著書を刊行。さらにダイヤモンド社や日経グループのウェブサイトにコラムを執筆し、NHKや朝日新聞にも「中国通」の若手論者として盛んに登場するなど、20代後半の若者としてはケタ違いの飛躍を遂げている。
だが、そんな彼が、日本の人々の目が届かない場所で行っていた「言論活動」とは、実はとんでもない内容のものであった。
加藤氏については、「週刊文春」(文藝春秋/11月8日号)に掲載された『中国で一番有名な日本人“加藤嘉一”の経歴詐称を告発する』が、彼の経歴詐称問題について報じている。彼が「東大合格を蹴って北京大に留学した」「北京大では朝鮮半島研究センター研究員を務めている」といった虚偽のキャリアを日中両国で使い分け、両国の情報格差を利用して経歴詐称を繰り返していた事実を暴いた内容だ。この記事は、ツイッターなどネット上を中心に大きな反響を呼んだ。
文春の記事本文は、経歴詐称以外にも加藤氏について詳細な報道を行っている。そのひとつは、本稿冒頭の発言のような、加藤氏の中国国内での「反日」「媚中」言説。もうひとつは、加藤氏が「中国側の親中世論形成プロジェクトの一環として組織的に養成された」とする指摘だ。
以下、記事に掲載されている、中国大手メディア幹部の証言を引用して紹介しよう。
「彼(=加藤氏。筆者注)は中国によって育てられたと言っても過言ではない。二〇〇四年ごろ、中国共産党宣伝部と、胡錦濤傘下の共産主義青年団(共青団)を中心に、国内外の世論工作を目的とした“中国を高く評価する”外国人の育成計画が成立しました。加藤氏はそのテストケースと言ってよい存在です。彼の流暢な中国語は、個人教師が数人で徹底的な教育を施したため。中国語の著作も、教官たちが三人がかりでリライトに協力していたといいます」
「日本人であることを中国メディアがこれだけ取り上げ、また国営テレビに出演することなどは、党の宣伝部の了解なしにはあり得ません。日本人青年の口から中国政府を褒めさせ、国内世論の安定を図ろうとしたのでしょう」
とにかくきな臭い話ばかりが聞こえてくる、加藤氏の身辺。彼の所属事務所へ取材を申し込んだところ拒否されたため、今回、独自取材を通じて、加藤氏の人物像とその背景についての証言を集めることにした――。
「留学期間を通じて、加藤君に“友達”がいるのを一度も見たことがありません」
北京大での在学経験を持つ、元留学生の河村氏(仮名)はこう語る。同氏は加藤氏と同じ留学生寮に入居しており、キャンパスの隣人として数年間にわたり彼を眺める立場にあった。
「とにかく上昇志向が強い人でした。留学当初は現地の中国人学生と言葉を教え合う相互学習会ですとか、地味な集まりにも参加していましたが、半年ほどで一切来なくなった。代わりに日本人留学生会の会長になって、もっと政治的な人脈づくりに動くようになりました」(河村氏)
北京大学留学生寮「勺園」。
ここでの「人脈」とは、やはり文春が報じたように、中国共産党の宣伝部関係者だったようだ。ちなみに「宣伝部」とは中国共産党のイデオロギー宣伝担当部門で、中国の国内メディアの報道内容を事実上統制する立場にある。
「遅い時間に寮に帰ってきたので理由を尋ねると、『党の宣伝部から接待に招かれた』。見慣れない服を着ているので尋ねると『CCTVの女性プロデューサーに買ってもらった』と。よくそんなことを言っていました」(同)
そんな加藤氏に、他の日本人学生はどう接していたのか?
「加藤君のギラギラした姿勢を露骨に嫌う人と、媚びてすり寄る人、無関心な人の3種類がいました。でも、彼と対等な友達付き合いをした人は誰もいませんでしたね。もっとも彼の側も 『付き合ってメリットがない人間』とは口もきかないのが普通。共産党宣伝部のほかに、国際交流基金や朝日新聞の特派員など、中国に駐在する日本人の偉いオッサンたちに対しては積極的な売り込みを行っていて、先方からも可愛がられていたようですが……」(同)
河村氏が見た限り、加藤氏には日本人はもちろん、現地の中国人の友達もいなかった。さらに「韓国人留学生から総スカンを食らっていた」ともいう。当時の加藤氏は「自分を崇拝してくる人間、政治的な利用価値がある人間以外とは関わらない人だった」というのだ。
一方、中国在住の複数の日本人ビジネスマンや報道関係者からも、こんな話が聞こえてくる。
「彼に仕事で会った後の雑談で、『毎日、鏡の前で自分が格好良く見える角度を研究している』と聞いて驚いたことがあります。『友達にアドバイスしてもらわないの?』と尋ねたところ『僕には友達がいません』と。なんでも自分一人で考えを完結させてしまうタイプの人、という印象でした」
「以前、日本の報道関係者が加藤氏に取材のアテンドを頼んだ際、手際が十分ではなかったらしく、ちょっと厳しい口調で叱責したんです。そうしたら、たったそれだけのことで、当時25歳ぐらいの彼が目に涙をためて『半泣き』になった。目上の人から叱られた経験が、ほとんどないのでしょう」
友達も、自分を叱ってくれる目上の人もおらず、本人自身も他人と心の交流を築こうとしなかったらしい加藤氏。そんな彼と“友情”を育んでくれたのは、彼を「党の代弁者」として利用する意図を持っていた中国共産党の関係者と、自らにすり寄る彼の姿を見て「感心な若者」だと勘違いした、日本人の“偉いおじさん”たちだけだったようなのだ。
加藤氏が「中国で一番有名な日本人」となった経緯については、文春記事本文が「中国共産党宣伝部と、胡錦濤傘下の共産主義青年団」によって育成されたためだと報じている。だが、ここで首を傾げることがある。
文春が加藤氏の経歴詐称を報じて以降、中国では「人民日報」(WEB版「人民網」)が「社会の『集団盲信』が生んだペテン師・加藤嘉一」と、露骨な題名をつけた論評記事を掲載。さらに国営放送のCCTVや中国国務院傘下の「中国網」でも独自の批判報道がなされるなど、いまや中国共産党系の主要メディアにおいて、日本以上に激烈な「加藤叩き」が行われているように見えるのだ。
中国共産党はなぜ、苦労して手ずから育成したはずの加藤氏を守らずに、徹底的な攻撃を加えているのか? その背景について、日本国内在住の中国人ジャーナリストは、次のように説明する。
「中国共産党は、10年ごろの段階ですでに加藤嘉一氏を切り捨てたという情報が、現地メディア筋や北京大学筋などから伝わっています。北京五輪が終了したことで『中国を褒める外国人』の利用価値が低下したのに加え、共産党系の英字紙がアメリカのワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズに多額の広告出稿を進めるなど、当局はこの時期に多額の資金を投じて、米国・日本・台湾などを対象にした、より大規模な対外世論工作を発動。こうした大規模作戦を前にして、加藤氏の影響力はあまりにも微小でしかなく、党にとって使えない『駒』になってしまったというわけです」
中国で「一番有名な日本人」であるはずの加藤氏が、なぜか中国国内での活動をセーブし、日本のメディアに盛んに登場し始めたのは、ちょうど10年の秋以降のことだ。共産党内の方針変更によって中国本土での仕事が激減した結果、日本への「逆出稼ぎ」に来たのだと考えれば、こうした動きにも納得がいく。
中国共産党が加藤氏を切り捨てたのは、「東大合格を蹴って北京大に留学した」といった、ちょっと調査すればすぐにバレるような嘘を連発する彼のビッグマウスも一因だったのかもしれない。
「党の意見を忠実に代弁する外国人の役割を担わせるには、加藤氏は言動や経歴に隙が多く、リスクが大きいのは事実でしょう」(同)
(「YouTube」より)
このジャーナリストによれば、共産党は10年以降もしばらくは加藤氏の動きを放置しており、中国国内でのメディア出演や講演活動を容認していたのだという。とはいえ今年5月、加藤氏が中国で「南京事件の真相はわからない」と発言したことを理由に、中国メディアが総出で大バッシングを行っているように(ご参考:http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=61945)、当局がすでに加藤氏への支援から手を引いているのは明らかだと語る。
「例の『南京事件の真相はわからない』という発言は、党の広告塔の役割を担っていた10年以前ならば、問題にもならなかったでしょうね。しかし、後ろ盾を失った現在の彼には、許されるものではありませんでした。また、日本国内のメディアで、尖閣諸島の領有権や劉暁波のノーベル平和賞受賞について“日本人向け”“西側向け”の発言を続けたことも、おそらく共産党の心証を悪くしたはずです。現在、中国国内のメディアが加藤氏を攻撃する際にしばしば用いているのが『中国では日本の悪口を言い、日本では中国の悪口を言う』という決まり文句。共産党は、加藤氏の利用価値が完全に消滅して役立たずになったと判断し、叩き潰す方針に切り替えているとみられます」(同)
証言を裏付けるかのように、中国問題に詳しいある日本人ジャーナリストはこう説明する。
「文春記事が出た当日から翌日にかけて、『人民網』や『中国網』、『環球網』など中国の主要サイトが、早くも加藤バッシングの独自記事を報道。中国の国内メディアが、日本の週刊誌記事に対してここまで迅速な反応を示す事態は、通常はあり得ません。加藤氏の経歴詐称疑惑自体は、今回の記事が出る前からすでに日中のネット上では話題になっていましたし、おそらく中国側は文春記事の発表以前から、加藤潰しの原稿を用意していたのではないでしょうか」
「狡兎死して走狗煮らる」とは中国の古い格言だ。
加藤氏は中国国内で、「(ダライ・ラマ政権支援者の日本人は)日本右翼勢力」「胡錦濤主席の思想に感服」といった言動で中国共産党の“走狗”として働き、党の宣伝部により「中国で一番有名な日本人」の地位に押し上げられた。だが、当局の事情により用済みになったことで、あっさりと“煮られて”しまったらしいのである。ほとんど“自業自得”に近いとはいえ、まだ20代の加藤氏は、中国を相手にずいぶんヘビーな経験をするハメになったようだ。
もっとも、今回の加藤氏騒動から浮かび上がる最大の問題点は、単に彼個人の「東大合格」といった経歴詐称や、日本人の若者が中国国内で共産党の広告塔として“反日”発言を繰り返していたことではないだろう。ここまで特殊な政治的背景がある人物を「新時代の中国通」として無邪気に持ち上げてきた、NHKや朝日新聞、ダイヤモンド社や日経グループといった日本の大手メディアの姿勢こそ、最も非難されるべきものであるはずだ。
先の日本人ジャーナリストは「加藤氏の日本国内での講演料は2時間当たり50万円前後で、喜んで大金を支払っていた上場企業も少なくない」と語る。講演者の身元すらもろくに調査せずに「中国情報」をカネで買うような姿勢でいるからこそ、日本企業は中国ビジネスに失敗するといえるのではないか。
今回の騒動から私たちが学ぶべきことは、「○○氏は大ウソつきだ」といった表面的な話ではなく、中国という国の底知れぬ恐ろしさと、日本人のメディアやビジネス業界の“情弱”ぶりなのかもしれない。
(文=編集部)
■おすすめ記事
業界一人負けのマクドナルド ハンバーガー総選挙でもランク外!?
アップル参入で注目! グーグルが牛耳るデジタル地図業界
キンドルも値上げか…海外ネット配信企業への課税でどうなる?
「また格下げ…」大赤字のテレビ事業を抱えるソニーほかの今
防衛省情報本部員も多数参加?のSNS秘密会は入会カンタン!?
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事