日本製部品が50%超! 米企業が iPhone5の中身を分解
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日本製部品が50%超! 米企業が iPhone5の中身を分解 – Business Journal(10月16日)
(「アップルHP」より)
米アップルの共同創業者、スティーブ・ジョブズ前会長が死去して早1年。その勢いはとどまらず、スマートフォン「iPhone(アイフォン)」やタブレット(多機能携帯端末)「iPad(アイパッド)」で快進撃を続けている。株式の時価総額はグーグル、マイクロソフト、アマゾンを足した額を上回り、世界一に昇り詰めた。
その快進撃の足元では、巨人アップルの“日本支配”が進んでいる。世界の最高水準を誇ってきた日本の電子産業は、アップルの下請けとなった。
先日発売された「iPhone5」の中身は、50%超が日本企業の製品だ。電子機器の分析会社、フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズがこんな衝撃的な調査結果をまとめた。iPhone5を解体して、約1000個の電子部品を1つずつ顕微鏡で調べ、製造元を特定した。
部品の点数が最も多かったのは村田製作所。電流をためたり放出したりするコンデンサーなど400個以上使われていた。同社はセラミックコンデンサーで3割以上の世界シェアを持つ。わずか0.2ミリの幅に100層ものセラミック膜を重ね合わせた最先端の製品が採用された。
TDKやロームはアップルの要望に応え、「5」向けに世界最小の電源コイルやトランジスタを新規に開発した。液晶画面はジャパンディスプレイ製、カメラの画像センサーやリチウムイオン充電池は、かつてスティーブ・ジョブズ氏が自ら「アップルのお手本」と言ったソニーの製品。液晶パネルを駆動する半導体はルネサスエレクトロニクス、情報を記憶するメモリーは東芝とエルピーダメモリのものが使われていたという。
ジャパンディスプレイは産業革新機構が70%出資し、ソニーモバイルディスプレイ、東芝モバイルディスプレイ、日立ディスプレイズの3社の事業を統合した“日の丸小型液晶会社”なのである。ソニー、東芝、日立製作所が10%ずつ出資している。会社名を見ているだけで電子部品業界における、アップルの影響力の大きさをうかがい知ることができる。
わが国の電子部品業界がアップルへの依存度を高めたのは、価格ではなく数量である。アップルとの取引は「世界最低価格での提供」が条件で、他社に販売するより1~2割、場合によってもっと安い。価格面だけを見ればアップル以外に販売した方が利幅は大きい。それでもアップルを優先するのは数量が圧倒的に多いからだ。
iPhoneの出荷量は1カ月に1000万台規模。1機種の生産量が数万台~数10万台規模の国内メーカーとはケタが違う。最新の部品を採用するタイミングもアップルは圧倒的に早い。最先端の超小型部品を使いこなすために必要な精密な機械もアップル向けに最優先で納入される。
世界最高水準の技術を誇る日本の最先端部品を大量に、かつ他社より安く抱え込む。世界最大のハイテク企業であるアップルによる日本支配は着々と進んでいる。
今年6月、ゴールドマン・サックス証券(GS)は、日本における電子部品業界の成長は、その半分近くがアップルに支えられる見通しだとするレポートを出した。
GSのアナリストがカバーする電子部品業界19社のうち、11社のアップル向け売上高の推計に基づいた試算だ。この11社は2012年度の全社売上高の合計が、前年度比で5000億円弱の増収になるとみられており、そのうち約45%がアップルからの注文による増収寄与分となる、と分析した。
アップルの快走により、アップル向けの部品を作る電子部品メーカーの工場はフル操業状態が続き、“アップル特需”に沸いている。だか、このことは、アップル1社に業界全体の業績が左右されるリスクが高まっていることの裏返しである。
そんな中で、今年8月には日本で初めてアップル倒産が起きた。本欄でも取り上げた小型モーターが主力の電子部品メーカー、シコー(神奈川県大和市、東証マザーズ上場)だ。同社は世界に先駆けてスマートフォンの小型カメラに使う自動焦点用モーターを開発、iPhoneに採用された。
11年、iPhone4の大量発注に備えて、小型モーターを製造する中国・上海工場にクリーンルームを新設、組み立てに使う大量の顕微鏡を購入し、数多くの労働者を確保した。
しかし、シコーにアップルから大量発注が来ることはなかった。それは、シコーは為替デリバティブに手を出していたことが原因だ。同社はこれにより、11年には毎月5000万円の現金(キャッシュ)が消えていったという。円安を前提とした為替デリバティブだったから、円高がモロに逆風になった。
この情報をキャッチしたアップルは、シコーの財務内容に問題ありとして取引を打ち切り、同様の製品を作っているアルプス電気にスパッと切り替えた。
シコーは8月10日、東京地裁に民事再生手続き開始を申し立てた。負債総額は85億945万円だった。アップルに製品が採用されたことで高成長を誇ったシコーの経営破綻は、チャンスとリスクが紙一重であることを如実に示した。電子部品メーカーにとって明日はわが身なのである。
そこで株式市場ではアップル・リスクを織り込み始めた。これまでアップル銘柄は自動的に買いだったが、アップルへの依存度がこれほど高くなると慎重にならざるを得ない。株価の高い銘柄を「売り」推奨する外資系の証券会社も出始めた。
アップルの光を享受してきた日本の電子部品業界に、アップルの影が確実に忍び寄っている。
(文=編集部)
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