サントリーと味の素が“誇大広告”合戦するあの健康食品とは!?
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サントリーと味の素が“誇大広告”合戦するあの健康食品とは!? – Business Journal(9月10日)
トクホコーラ大ヒットのカラクリ
「週刊東洋経済 9/8号」の大特集は『「貧食」の時代 壊れるニッポンの「食」』。欧米諸国では大きく社会問題化している「フードデザート(食の砂漠)」。フードデザートとは生鮮食料品が入手困難な地域を指し、日本ではこうした地域の住人は全国で910万人と推計されている。
なかでも深刻なのは、増加の一途をたどる高齢者のみの世帯だ。内閣府の推計では、2025年には1267万世帯と05年比5割増となる見通し。東京23区の中心部でも、高齢者世帯の独り暮らし比率がすでに4割超。身体能力の衰えに伴い、60歳を過ぎると外出は加速度的に減少していく。貧食が進み、70歳以上の4人に1人が新型の栄養失調に陥っていると指摘されている。
社会人でも貧食が進んでいる。ファストフードや「特別保健用食品(トクホ)」、サプリメント頼みの食生活から、この10年間を見ても高コレステロールを指摘される男性が、年代を問わずに急増している。保健効果の表示が認められているトクホから明確な定義のない一般の健康食品、さらに「野菜系飲料」まで含めた場合、「健康食品」の市場規模は2兆円に近いとされている。内閣府の消費者委員会の調査によれば、現在、健康食品を利用している消費者は約6割。「ほとんど毎日利用している人」は26%を占めている。
ただし、行きすぎた広告が目立ち、国民生活センターでは「健康食品の利用において留意すべきポイント」として、「販売会社側の情報は都合の良い情報がほとんど」と指摘する。たとえば、その摂取は動脈硬化予防に効果があるとされてきたDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペタエン酸)が含まれるサプリメントでは、厚生労働省が提示した『日本人の食事摂取基準2010年版』で「1日1グラム以上」のDHAとEPAを摂取したことが望ましいとしたこともあってサントリーと味の素が死闘を繰り広げている。
とくに両社は広告も過剰な競争中だ。サントリーは広告で「50代、60代 魚を食べているつもりでも……実は不足していませんか?」と訴えかけている。さらに広告では、大皿に盛られたクロマグロの赤身の刺身を登場させ、「『1日1グラム以上』はクロマグロの赤身の刺身なら約9人前以上必要!」と煽るが、実はクロマグロにはDHAやEPAがマイワシの十分の一しか含まれていない。現実的にはサンマ、しめサバをそれぞれ週一回食べるだけで、DHA・EPA合計で1日1グラム以上摂取できるのだ。つまり、9人前も食べざるをえないクロマグロをわざわざ登場させて、「魚(クロマグロ)を9人前とるよりはサプリメントの方が効率的」と消費者を誤解・誘導させるCMなのだ。
また、味の素の広告では「ドロドロやあれ?に強い味方」とタイトルを打っているがドロドロは高脂血症、「あれ?」は認知機能低下を想起させ、薬事法違反や健康増進法違反の疑いもあるのだ。
健康に良いというイメージを定着させるための商品のネーミング(商品名)にも問題がある。たとえば、伊藤園の「緑の野菜」やカゴメ「野菜1日これ一本」といった商品名だが、実は「緑の野菜」は野菜汁が30%しか含まれておらず、実態は「野菜汁入り果汁ジュ―ス」。「野菜1日これ一本」はこれ一本を飲めば、厚労省が推奨している1日分の野菜摂取の目標値350グラムに含まれる栄養成分をまかなえるかのように読めるものの、実際には加工によって失われる成分もあるという。ネーミングは景品表示法による規制の範疇で、実際のものよりも著しく優良だと示すものに限って違反(優良誤認)となる。
最近話題のトクホコーラにもカラクリがある。「キリンメッツコーラ」(キリンビバレッジ)は、発売からわずか3カ月で年間販売目標を当初の6倍の600万ケースに上方修正した。特定保健用食品(トクホ)として「男女とも30~40代を中心とした健康意識の高い『大人層』に多く飲用されている」という。このトクホコーラの売りは「食事の際に、脂肪の吸収を抑える」というもので、これは難消化性デキストリン(食物繊維の一種)が入っているためだ。実際にこの成分が入っているコーラと入っていないコーラで比較したところ、血中中性脂肪の上昇はピーク時の4時間後に1割強抑制されたが、専門家によれば、「効果がこの程度であればトクホのコーラを飲むよりも、脂肪分の多い食事を抑制する方が早道だ」と指摘している。
実は、この難消化性デキストリンはトクホ業界にとっての人気の成分で、これまでに許可されたトクホ商品のうち約3割が難消化性デキストリンを関与成分としている。難消化性デキストリンが一定の基準を満たしていれば、整腸機能、食後血糖値の上昇抑制機能については、有効性試験を省略できるため、企業にとってありがたい、都合の良い成分なのだ。今後ますます、難消化性デキストリンを使ったトクホビジネスが加速するかもしれない。どこまで消費者目線に立った商品を提供できるか、食品業界を代表する大手各社の企業姿勢が問われているのだ。
インサイダー事件で証券業界は再編か!?
大手各社の企業姿勢が問われているといえば、証券会社も同様だ。
「週刊ダイヤモンド 9/8号」の特集は『堕ちた金融 証券・銀行の大罪』だ。金融市場で不祥事が火を噴いている。世界では、市場最大の金融不祥事といわれるLIBOR不正操作が問題となり、日本の証券市場を揺るがしている増資インサイダー事件はさらなる広がりを見せているのだ。
増資インサイダー事件とは、投資家にとって喉から手が出るほど欲しい未公表の増資情報を一部の機関投資家が証券会社の営業マンからこっそり入手。株式の増資は1株あたりの企業価値が下がることから、日本企業に対する評価が低い市場では、増資発表後は株価が下がりやすい。このため、株価が下がる時に仕掛ける投資手法である「空売り」を増資インサイダー情報を仕入れた一部の機関投資家が行なうことによって、利益をぬけがけ的に得る仕組みだ。
こうした株は株式市場では不当に利益が下がり、一部のぬけがけ投資家が利益を得る代わりに、損をする投資家が続出するのだ。
今回、摘発されたのは、みずほFG(2010年6月増資)、国際石油開発帝石(10年7月増資)、日本板硝子(10年8月増資)、東京電力(10年9月増資)に関するケースで、これらのケースでは情報漏洩元として野村、大和の証券2トップが深く関与していることが発覚したのだ。とくに証券界のガリバー、12年3月末時点預かり資産残高が72兆円と、圧倒的な存在感のある野村証券にとって、今回の問題は、大口顧客への損失補填問題(1991年)、総会屋への利益供与事件(96年)に続く3度目の大不祥事。グループCEO(最高経営責任者)とグループCOO(最高執行責任者)が事実上の引責辞任となった。情報漏洩の犯人をドイツ人元社員に押し付けた大和証券とともに事件の幕引きを図ろうと躍起になっている。
さらに、問題は拡大しそうな雲行きだ。民主党が東京証券取引所に提出させた09年1月~12年7月6日までの売買高増加率上位20銘柄(通称「20社リスト」)を見ると、たしかに今回、増資インサイダーの問題となった4銘柄もこのリストに入っており、同様に他の銘柄にも事前になんらかの情報漏洩があって、売上高が大きく膨らんだのではないかという疑いが出てくるのだ。
これらの問題の背景には日本の証券市場の低調さがある。日本の株式市場における投資家別の売買シェアの推移を見ると、日本人投資家の存在感は大きく低下し、売買シェアの7割弱を外国人投資家が占めるまでになっている。この外国人投資家の主役はヘッジファンドだ。つまり、現在の証券会社の主要な顧客はヘッジファンドとなっており、彼らが喜びそうな情報を流すことを証券会社が競い始めているのだ。
証券会社は自社で株式の取引をしてもらうように(手数料が目当てだ)熱烈な営業攻勢をかける。ヘッジファンド側(なかでも、今回、渦中となったヘッジファンド、ジャパン・アドバイザリー)は証券会社を提供するサービスによって順位付けし、証券会社を競わせながら巧みに未公開情報を吸い上げていたというのだ。こうした構図がある限り、インサイダー事件はなかなか終わりそうもない。
収益力が先細る野村証券には、メガバンク傘下入りの声も出始めた。三菱UFJフィナンシャルグループ(FG)が最有力だが、みずほFGや三井住友FGも名前が出始めている。今後の証券業界は銀行との「銀証連携」が加速しそうだ。三井住友FGは09年に日興コーディアル証券を買収。三菱UFJFGは10年に、モルガンスタンレー証券の投資銀行部門の統合を果たした。みずほFGはリテール(個人向け)部門のみずほインべスターズ証券とみずほ証券の合併を来年に控えている。不祥事によって、足元で、野村や大和の力が相対的に弱まるなか、銀行系証券会社が存在価値を高める好機となっていくのかもしれない。
(文=松井克明/CFP)
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