なぜ電通博報堂は自社のテレビCMしない?視聴率のカラクリ
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なぜ電通博報堂は自社のテレビCMしない?視聴率のカラクリ – Business Journal(6月20日)
(日本テレビ系)。(「同社HP」より)
さまざまなテレビ番組や雑誌などでもお馴染みの購買/調達コンサルタント・坂口孝則。いま、大手中小問わず企業から引く手あまたのコスト削減のプロが、アイドル、牛丼から最新の企業動向まで、硬軟問わずあの「儲けのカラクリ」を暴露! そこにはある共通点が見えてくる!?
大学生のとき、はじめて「デンパク」という言葉を知った。最初に聞いたときは「電波君」と言われたかと思ったが、電通と博報堂という会社のことだった。なんでも、テレビなどの媒体の宣伝広告枠を売って、CMを制作してお金をもらうのだという。まわりの就職学生いわく、「あそこに入社できたら超エリートだ」と。
しかし、そのときに疑問に抱き、いまでも疑問なのが、「なぜ広告代理店は、自社のCMをテレビで流さないのだろう?」ということだった。そりゃ、企業相手の商売だからCMはふさわしくないのかもしれない。ただ、企業相手の商売を営むところだって、デンパクによってイメージ広告を出しているではないか。
「社員が自社商品を使っていない場合、その商品を疑え」という法則からすると、どう考えればいいだろう。もしかすると、価格相当の価値がないということか?
大学卒業から10年ほどたって、テレビに出演する側になった。視聴率いかんによって広告費が変わるから、現場はいつでも必死だった。ゴールデンタイムにレギュラー出演していた番組のスタッフが、放送から数日後に「今回は10%切りました」とか「なんとか10%超えました」と教えてくれた。彼らからすると、その数字で命運が決まるのだから意識せざるをえない。
視聴率は正しい数字を表現するのか?
ところで、この視聴率というもの。相当な誤差があることは、ほとんど知られていない。視聴率の調査は、限られた家庭に設置された視聴率調査機による。その数が600とすると、その600家庭が視聴している率がすべてを代表する。「サンプル数がたった数百であれば、実態とズレる」ということは、誰でもわかるだろう。
列記しておこう。統計的な解説は省くものの、下の数字は信頼度95%のときだ。
・視聴率5%の場合:実態と±1.8%ズレうる。具体的には3.2%~6.8%の幅をとる
・視聴率10%の場合:実態と±2.4%ズレうる。具体的には7.6%~12.4%の幅をとる
・視聴率20%の場合:実態と±3.3%ズレうる。具体的には16.7%~23.3%の幅をとる
・視聴率30%の場合:実態と±3.7%ズレうる。具体的には26.3%~33.7%の幅をとる
どうだろうか。テレビの現場では、視聴率7.6%と、12.4%ではまったく異なる印象だ。しかし、「視聴率10%」の場合、両方「実はこうだった」という可能性のある数字なわけだ。これほどの誤差をもっているものに左右されてしまうテレビマンたちに、同情せずにはいられない。
何度もテレビ制作会社の人に、視聴率のもつ誤差について説明しようと試みたけれど、「理系じゃないから、統計とかわかりません」だと。幸多かれと祈るしかない。
ところで、視聴率1%に一喜一憂し、宣伝枠の価格が変わる状況は笑うべきか、あるいは茶番として危惧すべきだろうか。少なくとも、喜劇か悲劇のどちらかには違いない。
テレビ局は、ぼくたちをバカにしているのか?
現場のテレビマンは、そのような状況に翻弄されてはいる。ただ、私は彼らに単純にエールを送りたいわけではない。視聴率というものに右往左往させられて、時間が不足している影響か、あるいは制作費が少なくなった影響か、あきらかに番組のレベルが低下しているように私には思われる。
私もテレビに加担しておいてなんだけれど、最近の番組の大半は芸人を集めて与太話をするだけ。芸人いじめの公開放送か、あるいは安上がりなクイズ番組。まともなビジネスマンであれば、視聴に費やす時間はないだろう。
新聞のテレビ欄を見ていても「!」とか「!!」といった記号があまりに目につく。中身がないから、せめて「!」や「!!」でごまかそうとしているようにしか思えない。そもそも記号の多用は、作り手の工夫のなさを示しているといえないか。
そう思って調べてみた。
1960年5月1日から10年同日まで10年ごとに、5月1日付朝日新聞東京版キー局のテレビ欄で「!」「!!」の数をかぞえた(「!!」は2個とカウントした)。
・1960年5月1日:合計1個(フジテレビ・1個)
・1970年5月1日:合計14個(日本テレビ・3個、TBS・2個、フジテレビ・3個、NETテレビ・5個、東京12チャンネル・1個)
・1980年5月1日:合計35個(NHK・1個、日本テレビ・13個、TBS・7個、フジテレビ・6個、テレビ朝日・8個)
・1990年5月1日:合計58個(NHK・1個、日本テレビ・9個、TBS・18個、フジテレビ・6個、テレビ朝日・18個、テレビ東京・6個)
・2000年5月1日:合計60個(NHK・2個、日本テレビ・13個、TBS・7個、フジテレビ・17個、テレビ朝日・18個、テレビ東京・3個)
・2010年5月1日:合計63個(NHK・8個、NHK教育・5個、日本テレビ・12個、TBS・7個、フジテレビ・7個、テレビ朝日・20個、テレビ東京・4個)
と、60年にはわずか1個だった「!」「!!」の数は、50年を経て63倍に至った。もちろんこれは、5月1日のみを対象とした調査ではある。ただし、この増え方は大き過ぎるという実感は、多くの視聴者に共有いただけるものだろう。
表面だけ「!」と飾って、中身のない番組が増加
番組内容の中身に自信があれば「!」「!!」など使わないだろう、とはいわない。しかし、この「!」「!!」の増加と、テレビ人気の反比例を考えるに面白い。表面だけ「!」と飾っても、視聴者はその中身のなさに気づく。企画力が低下したためか、中身のない番組が増え、テレビ離れが加速していった。
これはテレビ以外のメディアが発展したためだ、という単純な理由ではない。たしかに、スマホも大人気だろう。しかし、それなら10年のワールドカップ視聴率が50%を超えることが説明できない。テレビ向けコンテンツよりも、スポーツのライブ配信のほうが、はるかに価値があるのだ。これはテレビのコンテンツ力が低下したと思ったほうが良い。
視聴率は厳密でない。中身のレベルも低下している。視聴者は日々の番組に飽き飽きしだした。それでもテレビの未来ってあるのだろうか?
わざとらしいが、真剣に一言。
テレビ制作現場のみなさん、がんばれ!
(文=坂口孝則)
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