「期待外れ?」「これぞ京アニ?」 賛否両論『氷菓』の本当の見どころ
#アニメ #アニメ時評
『涼宮ハルヒ』『らき☆すた』『けいおん!』と、ゼロ年代後半から11年代のアニメシーンにおいて、重要なポジションに位置する京都アニメーションが放つ新作アニメ『氷菓』の評価がいまひとつ芳しくない。
「地味だ」「ストーリーが面白くない」「そもそもストーリーがよくわからない」など、放送前の高すぎる期待と裏腹に、肩すかしを食らったとでもいうようなアニメファンの感想が第1話放送直後よりネット上に散見。以降も毎回放送が終わるたびに、「微妙」というような感想がTwitterや「2ちゃんねる」などの掲示板に書き込まれ続けている。
その一方で、「文字をビジュアル化する演出が見応えがある」「丁寧な謎解きが面白い」という感想も回を追うごとに増加。アニメファンの間でも賛否両論が飛び交っているのが現状だ。
確かに本作は地味な作品である。廃部寸前の「古典部」に入部した4人の高校生が、学校に潜む謎を解き明かしていくというライトノベル、というよりもジュブナイルな性格の強い小説を原作に持つ本作には、昨今のアニメやライトノベルにありがちな特別な能力を持つ主人公も、異世界からやってきたヒロインも登場することはない。日常に潜むちょっとした不思議や事件をロジカルに解き明かそうという、いわば「日常系推理小説」だといえる。
本作の魅力はそんな「地味な日常描写」の中にこそあり、またその魅力を描く上で京都アニメーションの丁寧な作品作りこそ必要不可欠なものだと言いたい。
先述したように、本作は「日常系推理小説」であるために、謎の解決に至るまでに視聴者には非常に細やかな日常シーンが描かれ、その中に事件解決に繋がる伏線があまりにもさりげなく盛り込まれている。このナチュラルかつ丁寧な日常描写こそ京都アニメーションの真骨頂である。
『ハルヒ』や『けいおん!』などの作品で、京都アニメーションは「わかる人が見たらニヤリとする」小物や「ここまで描きこむのか!」と視聴者を驚かせる演出を多く生み出し、セリフやキャラの動きだけでは表現できない深い世界観を構築してきた。
いわばこれまではアニメを録画し、何度も画面をチェックするようなエリートアニメファン向けに用意されていた細かな演出を、本格的に物語に組み込んできたのが『氷菓』なのだ。これはカジュアル&ライトな作品が受ける傾向にある、昨今のアニメシーンに対する強烈なアンチテーゼだ。
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