観光にバーベキュー、副業に至るまで……中国の救急車は私用で不足中!?
#中国
緊急性の低い軽症での出動要請やいたずら通報など、救急車利用マナーの悪化が問題となる中、今年4月、総務省消防庁より「救急車利用マニュアル」が公表された。ところが、お隣中国では患者側ではなく、救急関係者のマナー改善が必要に迫られている。
5月の労働節による大型連休中、中国の「国家5A級観光風景区」に指定されている河南省平頂山に、1,000キロ以上離れた浙江省寧波市所属の救急車が出現した。この救急車で患者を搬送した3人の隊員が、帰路に120キロもの回り道をし、同地や同省登封市にある少林寺などを観光していたためだ。
また、今年1月には河南省鄭州市内で、果物や鶏の唐揚げなどの贈答用品を満載している救急車が発見されている。それらの品々の多くは、ギフト用の紙袋に入れられており、関係者が救急車を私用して宅配業務を行っていた疑いがもたれている。この件について、地元メディアが同救急車所属の病院に電話取材を行ったところ、「院長は救急車で出張中」と、あっけらかんとして答えたという。
さらに過去にも、救急車で病院関係者がバーベキューに出かけたり、病院院長が運転手付きの送迎車として利用するため、患者の搬送を禁止していたという例もある。
こうした救急車の私用中に急患が出た場合、迅速な搬送が行えず命に関わる危険もある。しかし中国紙の記者によると、同様の事例は今後も起こり続けると話す。
「救急センターや消防が救急車を所轄している多くの先進国とは異なり、中国の救急車は基本的に病院が所有している。そのため、病院関係者は自分の病院の救急車を私用することに対しても、営業車を借りているくらいの意識しかないんです。また、出動しても運賃前払いで、払えない者には搬送しないという人道的な問題や、救急車の手配に時間がかかりすぎるという問題も発生しており、救急システムの見直しが急務となっている」
この国で何かあったとしても、救急車は頼りにならなさそうだ……。
(文=牧野源)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事