漂う濃厚な性の匂い 燃えろリビドー!『謎の彼女X』
#アニメ
「感じてみろX、叫んでみろX、すべて脱ぎ捨てろ」……といえば、現在もワールドワイドに活躍中の大御所ヴィジュアル系バンド・X JAPANの名曲「X」の歌詞であるが、ここに端的に顕れているように、Xという言葉に漂うよくわからない過激さ、そこはかとない危険の薫り、お子様お断りな感覚(実際、18歳未満禁止のことを「X指定」「X-rated」などと言ったりもするし)というのは、一体何に起因するものなのだろうか。やっぱりXとセックスの響きが似ているからなのだろうか。何はともあれ、Xはセクシャルな言葉である。
で、『謎の彼女X』(TOKYO MX)なのである。ただでさえ淫靡な雰囲気の「X」に、「謎の」「彼女」と来たものだ。どこからどう切ってもエロい(「このタイトル、『遊星からの物体X』のパロディだよね? ホラーっぽくない?」などという無粋なツッコミは禁止)。そんなエロエロしいタイトルのアニメが、現在放送中なのである。
中身を見てみれば、これがまたタイトルから想像される以上にイヤラシい。といっても、キャラクターの肌の露出具合だけを見れば、『謎の彼女X』を超えるタイトルはたくさんある。それどころかキャラクターデザイン的には、昨今のアニメ事情に鑑みて、地味なほうである。モッサリしていて芋臭い。だがそれがいい。「プレイボーイ」じゃなく、「平凡パンチ」のグラビア。吉木りさではなくアグネス・ラム。なんともいえない昭和のエロスがある。三島由紀夫が生きていたら絶賛したに違いない。
そんな純朴で田舎臭い雰囲気のあるキャラクターたちが織りなすドラマが濃厚だ。ごくごく平凡な高校生だった主人公・椿明は、一瞬の気の迷いで、転校生・卜部美琴の唾液を舐めてしまい、定期的に美琴の唾液を摂取しなければ禁断症状の起こる体になってしまう。そして明と美琴は男女交際を始めるのだが、そこから先、「唾液を舐める」という以上の肉体的な接触は描かれない。当然、健全な高校生である明は性的衝動に悶々とするワケだが、その衝動がこれでもか! これでもか! とシンボリックに描写される。
もともと植芝理一による原作コミックの描写が変態的なのだが、映像化にあたって、近年のアニメ『ドラえもん』でしずかちゃんに偏愛を注いできた監督・渡辺歩の濃厚なテイストがドバドバと注ぎ込まれ、怪しさが画面から匂い立ってくるかのようなアニメーションになっている。中学生の頃にこんなものを見ていたら、確実にダメな何かに目覚めていただろう。馬齢を重ねていて、良かったやら、悪かったやら。
というわけで、夜の生活にマンネリを感じている中年男性諸氏、はたまた、一生ものの性的なトラウマを負いたい思春期の諸君、そして肉体の衰えを感じ始めている青年たちに、『謎の彼女X』を強く、強くオススメするものである。ビバ、発情! ビバ、回春! リビドーに火を点けろ!
(文=麻枝雅彦)
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