エイベックスの経営も直撃! 音楽ダウンロード販売不振の背景
#音楽
音楽業界において唯一の成長分野であった音楽ダウンロード販売が不振に陥っている。日本レコード協会によると、2011年の有料配信の総売上実績は前年比17%減。モバイル部門に限れば同22%減という厳しい結果となった。
その背景には、従来の携帯電話(ガラケー)からスマートフォンへの移行にあたり、多くのユーザーが有料課金サービスから離れていることが挙げられる。携帯電話向けのダウンロード販売大手のエムティーアイは19日、12年9月期決算の純利益見通しを7割強も下方修正し、市場関係者にショックを与えた。
「同社はレコード会社各社との関係の良さを武器に、かつての着メロブームが終わった後も、原盤権者からダウンロード販売の権利を得て急成長を続けてきました。しかし、スマホ時代の到来で有料会員数が激減。スマホ向け広告費も積んでいますが、今のスマホユーザーはYouTubeで無料視聴するか、ダウンローダーを使って音源を手に入れるスタイルが主流で、有料販売は大苦戦しています」(レコード会社関係者)
こうしたダウンロード販売の落ち込みは、原盤権を所有する各レコード会社の経営も揺さぶっている。レコード会社大手のエイベックスは、直近の四半期決算で音楽部門の売り上げが前期比4割も減少したと発表。その理由として同社は、ダウロード販売の不振とコンサート動員の落ち込みを挙げている。
「エイベックスは業界で最もダウンロード販売に熱心な会社だったために、スマホ化に伴う販売不振の影響をモロに受けています。CD、ダウンロード、コンサートそれぞれの不振で、音楽事業ではもはや打つ手がない状態。今後は、映画事業や芸能マネジメント事業に軸足を移していく計画のようです」(前出の関係者)
同社では、浜崎あゆみをはじめとする各歌手やユニットが新曲の先行ダウンロード販売などの“営業努力”を行っているが、売れ行きの低下には歯止めが掛からない。他社ではJUJUや青山テルマ、西野カナといった「ケータイ歌姫」とも呼ばれた女性歌手たちも、コンサート数を増加させるなど、ダウンロード販売減への対応を迫られているという。
今後の解決策としては、欧州で人気のスポティファイなどのような定額聴き放題型のサービスの普及などが考えられるが、こちらは原盤権者の取り分をめぐり、サービス事業者と権利者の交渉が難航している。音楽業界にとって、残された時間は決して多くはないのだが……。
(文=柴田勇気)
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