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ソーシャルゲームの潮流に乗って視点はアジアへ! 東京ゲームショウ2012開催発表会レポート

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 2月17日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで東京ゲームショウ2012開催発表会が行われた。一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は日経BP社との共催のもと、「東京ゲームショウ2012」を9月20日から23日までの4日間、千葉・幕張メッセにて開催することを決定。17日から出店の申込受付を開始した。

 東京ゲームショウは2010年度からアジアNo.1の情報網羅性と世界最大規模のイベントという中期目標を掲げ、発信力を強化。さらに市場と開発拠点の開拓を目的にアジア圏でのビジネス拡大を目指し、アジア・ゲーム・ビジネス・サミットを実施するなどBtoB機能強化に取り組んできた。結果として昨年は東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故というマイナス要因がありながら来場者数は史上最多の22万2,668人を記録、2010年に続く20万人突破となった。

 第22回を数える今年はどうなるのか。冒頭、和田洋一CESA会長が、ソーシャルゲームが台頭する現状への認識を示した。

「新しいタイプのゲームについての、業界全体の温度差がなくなった。疑心暗鬼の中、大きな流れが来ているという認識を共有できたのが昨年だったのではないでしょうか。さらに今年以降、大きく飛躍すると思います。つまり今、ソーシャルゲームといわれているものが、 いち端末の特殊な現象、あるいはいちゲームジャンルの、ということではなく、すべてのゲーム、すべてのプラットフォームについて適用できる、新しいタイプのビジネスモデルを提供したのだということが我々の中でも消化できてくるのではないかと思うのです。

wadacesa.jpg和田洋一CESA会長

 家庭用ゲームソフト(とハード)が生まれて以来、その二十数年前にできたビジネスモデルに乗ってここまで伸びてきたわけですが、ほかのネットワーク端末がどんどんビジネスモデルを進化させていくのに対し、我々の業界はコンテンツは進化したがビジネスモデルの進化はなかった。そこがひとつ、踊り場に差しかかった原因ではないかと考えます。それが、ソーシャルゲームから新しいビジネスモデルに接することができた。お客様の要望に応えるきっかけができたのではないか。今年の東京ゲームショウでそういったタイトルがどのくらい出てくるかはわかりません。しかしながら、今年が大きな分岐点になるのではないかと思っています。

 全部がアイテム課金になるということではありませんよ(苦笑)。そうではなく、多様なビジネスモデルを提供できる素地が整ったということを申し上げているわけです。それによってすべてのお客様、すべての端末、すべてのゲームジャンル、ビジネスモデルが変わることによってマーケットがさらに飛躍するきっかけになる年になるのではないかと思います。日本だけでなくアジア、欧米も関心の高い、非常に期待できる、分岐点になるゲームショウになるのではないかと考えています」

 また長田公平日経BP社代表取締役社長も「ソーシャルゲームでゲーム産業のビジネスモデルが大きく変わってきている。従来のパッケージ販売ビジネスから、アイテム課金といったネットワークを利用したビジネスが台頭してきている」と声をそろえた。

bposada.jpg長田公平日経BP社代表取締役社

 これまで家庭用ゲームが浸透しなかった地域にも新たなゲーム市場を生み出すソーシャルゲームが業界に勇気を与えていることは間違いない。「従来の既成概念を捨てて変革していく必要がある」「グローバルなビジネスが拓けてきている」「アジア市場の中核に」と、非常に前向きな発言が目立った。

 こうした変化の潮流をまともに受けるのが今年の東京ゲームショウというわけだ。昨年のGREE出展は、変化の端緒を示したにすぎないのかもしれない。

 東京ゲームショウ2012のテーマは「GAMEで笑顔がつながっていく」。達成目標は来場者数19万5,000人、出展社数180社、出展小間数1,550小間となっている。これまで東京ゲームショウに参加したことのない企業を紹介する「アジアニュースターズコーナー」新設、アジア圏でのTGSプレイベント実施、海外トッププレーヤーを招いてのアジアe-Sports選手権開催など、アジアを重視した施策が多い。

 昨年、原発事故で日本が敬遠される中でも東南アジアからの来場者が増えたこと、SNSの広がりで市場が耕されていることが影響している。端的には、ソーシャルゲームで新規需要を掘り起こし、アジアへの進出で規模を拡大するという狙いがみてとれる。

 発表会ののちに開催された懇親パーティーでは、乾杯の音頭の際、辻本春弘CESA理事は次のように語った。

「配信が主流になりつつあり、非常にチャンスが出てきている。今のパッケージビジネスも自動車や家電に比べれば原価率は低いが、それでも光媒体を生産してデータを載せて売らなければならない。しかし(配信ならば)光媒体すらも不要となると、原価を考えなくともよくなる」

 問屋、小売店にとっては頭の痛い話だが、流通や在庫管理のコストが霧散するとあれば、製造業にとっては希望が持てる。辻本理事はそれだけでも原価率を20%改善できるという。流通業者に対するBtoBであったものが直接ユーザーに向くBtoCになるとなれば作品の内容にも影響が表れるはずだ。

 ソーシャルゲーム~ネットワーク配信と並ぶもうひとつのテーマであるアジアについても、地域としての伸びしろを期待する旨の談話を残した。

「ゲーム業界もどうやってアジアを市場化していくかがテーマ。配信ビジネスになると、店舗を構え工場を建てる投資が必要ない。iPhoneだけで配信できる。その点でゲーム業界は他の産業に比べて有利だと思う。アジアの市場を捉える上で、東京ゲームショウは非常に有効。アジアに対する窓口として活用する意味で、アジアナンバーワンのゲームショウにしようという趣旨を掲げています」

 最後にはこう締めくくった。

「今、日本全体に元気がないわけですが、コンテンツをビジネスにして国力を上げていくというのが重要なことです。ゲーム産業で日本をあかるくするために東京ゲームショウを成功させたい」

 その後、辻本理事ご本人のもとにうかがい、パッケージビジネスからソーシャルゲームへの転換について訊ねると「戸惑いはありません。プラットフォームが増えただけだと思っています。私たちは常にユーザーのほうを向いていますから、非常にシンプルです」と語ってくれた。

 どうやら描かれている近未来像は、現状のソーシャルゲームよりも凝った内容の作品を新しい配信の仕組みに載せていく、というもののようだ。届け方の変化がゲーム性にどのような変化をもたらすのか。その一端が垣間見えるゲームショウになるのかもしれない。
(取材・文・写真=後藤勝)

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最終更新:2013/09/09 14:43
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