主演声優はなんと中学3年生! フレッシュなキャストで臨む『エウレカセブンAO』
#アニメ
2月16日、東京都内で新作テレビアニメシリーズ『エウレカセブンAO』の製作発表会が行われた。
『エウレカセブンAO』は2005年にテレビで放映された『交響詩篇エウレカセブン』、09年の劇場版『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』に続くシリーズ最新作。製作発表会には南雅彦ボンズ・プロデューサー、竹田靑滋毎日放送・プロデューサー、フカイ・アオ役の本城雄太郎、アラタ・ナル役の宮本佳那子、フレア・ブラン役の大橋彩香が登壇し、作品について語った。
南プロデューサーのあいさつで述べられた企画の動機は以下のようなものだった。
「放送から7年という時間が経過し、『エウレカセブンAO』という新作を発表する運びになりました。前作は1年間という長いタイトルでありましたし、京田(知己)監督はじめ30代の若いスタッフが力を入れ、大団円を迎えた作品になりましたので、そのときは続編を考えていませんでした。
(しかし)『ポケットが虹でいっぱい』を制作していく中で次の新しいものが作れるのではないかという気持ちが生まれ、準備を進めてきました。『エウレカセブン』がロボットアニメーションとして”持ち合わせてしまった”魅力を、その時代その時代に表現していくものにつなげられるのではないかという思いがあったからです」
今の時代で描くロボットアニメーションを目指していると南プロデューサーは言う。『交響詩篇エウレカセブン』がファンタジーであったのに対し、『エウレカセブンAO』が沖縄を舞台とした”地続き”であるのも、その時代性に関係している。
沖縄の離島、磐戸島で老医師トシオとともに島で暮らしていた少年「アオ」は、中学校の入学式を目前に控えていた。そこへ突如現れた謎の存在「シークレット」は島に出現した「スカブコーラル」を狙い、容赦のない攻撃をしかけてくる。巨大なモンスターを前になす術もない島民たちは混乱に陥り逃げ惑うことしかできなかった。
アオは島を守りたい一心で、偶然手にした鍵を使い日本軍の輸送艦に積まれていた軍用FPを起動させる。それはかつて「ニルヴァーシュ」と呼ばれた人型のIFOだった──。
現実ににじり寄った作品の空気を表すように、この日発表されたキャストは新鮮な顔ぶれ。あらかじめスタッフが思い描いたキャラクターそのものの役者を探すべく、全員をオーディションで決めた。もし、これといった声に出会えなければ、再度オーディションを行う覚悟だったという。
主人公フカイ・アオ役の本城雄太郎は若干15歳の中学3年生。ステージ上で深呼吸するほど緊張する初々しさに、会場に集まった関係者、記者も驚きを隠せない。
「受験生だったので久しぶりのオーディションに緊張しました。2階で勉強をしていたときに、お母さんに”『エウレカセブン』受かったよ”と言われ、ハイタッチをしました。お祝いはファミレスでしたが」
少年役には女性声優が配されることが多い。リアルな中高生を表現できる同年代の男性声優はそうはいないことが理由だが、その期待が込められている。
「もう、めちゃめちゃ緊張しています。どうせ緊張するから、練習するしかない」(本城)
ともに登壇したふたりの女性キャストもハツラツとしている。アラタ・ナル役の宮本佳那子は22歳。事務所の忘年会中にマネジャーから合格を伝えられ、その場で同僚に祝福してもらった。フレア・ブラン役の大橋彩香は17歳。学校帰り、マネジャーから駅前に呼び出されてうれしさのあまりその場で号泣してしまったという。
またビデオメッセージで登場した小見川千明がエレナ・ピープルズ、井上和彦がトゥルースなる謎の人物を演じることも併せて発表された。
「今から緊張していておなかが痛いんですが、アフレコまでにできることをやってフレアに向き合っていきたい」と大橋彩香が抱負を語るその姿から、既に『エウレカセブンAO』が始まっているかのようだった。
「そのキャラクターを演じられる人を探していたのと、役者として可能性の広がりを期待でき、キャラクターがこれから進んでいく運命に立ち向かっていける役者を選ばせてもらった」と南プロデューサーは言う。
「この2年間ストーリーや画を作ってきましたが、来週からアフレコが始まり、(制作工程の)最後に命を吹き込んでもらえることですごく楽しみにしていますし、興奮しています」
最後のあいさつには竹田プロデューサーが立った。
「冒頭に前作のダイジェストが流れましたが、見直すとまったく古くなっていないと感じます。京田監督のこだわり、吉田(健一)さんの絵の強さ、そういったものをあらためて認識させられました。色褪せない何かがあった。誰かの真似ではないオリジナルだと思い込んで作っていったパワー、そのときのロボットアニメーションでトップランナーであるとの自負が画面に乗り移っていったと感じました。
今回、新シリーズを毎日放送発で放送させてもらうことになったのはうれしいかぎりです。シナリオもリアリティーがある、面白いものに仕上がってきています。リアルな若者をキャスティングしてリアルなアフレコができる。面白い作品になれる。僕の感覚で言うと、4月スタートの新番組の中では群を抜いてクオリティーの高いものになるだろうという確信があります。
僕が好きな作品には3つの要素があります。まずミステリアスであること。謎の多さ。それから勇猛果敢に、いろいろなことにチャレンジすること。もうひとつは、シナリオにしてもキャラクターにしても、作品自体が見ている側に噛みついてくるフューリアス(猛烈、激怒)な獰猛さ。その3つがあったら大概は面白いことになると思う。ニルヴァーシュに生命のプリミティブな造型も加わって相当力強い作品になると期待しています」
『エウレカセブンAO』は4月12日のMBSを皮切りにテレビ放送を開始、4月1日からサービスが始まるスマートフォン向け放送局「NOTテレビ(ノッティーヴィー)」でも高画質配信される。
並々ならぬ覚悟が横溢した会見からは、送り手自らが課したハードルを乗り越えて何かを起こしそうな予感が漂っていた。
◆京田知己監督コメント全文(原文ママ)
何かが起こって目覚めるほど社会に疎いわけではないし、それにコミットしてこなかった訳でもない。何かが起こる前から物事は動いていたし、作り上げてもきた訳で、残念ながら何かが起こって劇的に心境が変化したわけではない。
ただ言えるのは何かが起こったことで、それが加速した可能性を否定出来ないことであって、それを単純な心境の変化としてしか読み取ってもらえなくても構わないのだけれども、何かやろうと思っていたことに対して「より真剣に」なったのは確かである。より真剣に「伝えたい」と思うようになったのは確かである。
いったい何を?
それはフィルムを見てもらった上で判断してもらう他にないのだけれども、今、この段階で言うとするなら、それはこれから僕らは「アニメ」を作ろうとしているのだ、ということである。
様々な世代、様々な階層、様々な人々の手によって作り出されるアニメ。
それが示唆するものが、僕らが作ろうとしているものの根源であると、僕は確信する。
それが示唆するものが、僕らが作りつづけてきたものの根源であると、僕は確信する。
何かが起こって変わったのかもしれない、しかし変わるつもりはない。
僕らは今、そんなものを作っている。
エウレカセブンAO 監督:京田知己
(取材・文=後藤勝)
いっぱい。
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