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“9.11文学の金字塔”が映画化『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

elic_main.jpg『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』
(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 今週は、求めるものを手に入れるため行動する主人公の体験を通じて、人生の意味を考える契機を観客にもたらしてくれる話題の新作映画2本を紹介したい。

 2月18日に封切られる『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』は、「9.11文学の金字塔」と評されたジョナサン・サフラン・フォアのベストセラー小説の映画化。2001年9月11日の世界貿易センターへのテロ攻撃で大好きな父親を失った少年オスカー。人並み以上に多くを怖がる彼に、”調査探検ゲーム”で少しずつ恐怖を乗り越えることを教えたのが亡き父だった。父の死を受け入れられないまま1年が過ぎた頃、オスカーはクローゼットから「ブラック」と書かれた封筒に入った鍵を発見。鍵穴を探し当てれば父からのメッセージを受け取れると信じ、ニューヨーク中に400人以上いる「ブラック」を訪ねる旅を開始する。


 父親役のトム・ハンクス、母親役のサンドラ・ブロックという2人の名優に、映画初出演ながらまったく引けを取らないピュアな存在感を放つオスカー役のトーマス・ホーン。喪失感と苦悩を乗り越えようとする主人公の純粋さ、脆さ、内に秘めた強さを見事に表現している。祖母のアパートを間借りする老人役のマックス・フォン・シドーは、セリフが一切なく、表情と身ぶりだけで感情を表現する難役で第84回アカデミー賞助演男優賞にノミネート。スティーブン・ダルドリー監督にとっては、『めぐりあう時間たち』(2002)『愛を読むひと』(08)と3作連続でのアカデミー賞作品賞ノミネートとなった。愛する人を失った悲しみと痛みに向き合い、克服しようとする人々の姿を優しい眼差しで見つめた本作は、まもなく東日本大震災から1年を迎える日本でも共感を持って迎えられることだろう。

 一方、2月25日公開の『ヤング≒アダルト』は、オスカー女優シャーリーズ・セロンが激しくイタい思い込みで爆笑と涙を誘うバツイチ・アラフォー女性に扮したコメディドラマ。夫と離婚し、自堕落な都会生活を送っていたヤングアダルト(ティーン向け)小説の作家マービスは、高校時代の恋人バディ(パトリック・ウィルソン)とその妻から、赤ん坊の誕生パーティーの案内メールを受け取る。輝かしい青春時代を取り戻そうと、故郷の田舎町に帰った彼女は、セクシーなドレスに派手なメイクでバディに再会。ヨリを戻そうと猛アタックを開始するが……。

 『JUNO ジュノ』(07)の監督ジェイソン・ライトマンと脚本家ディアブロ・コーディの名コンビが再タッグを組んだ最新作。シャーリーズ・セロンはハリウッドを代表する美人女優の一人であるにもかかわらず、醜悪な連続殺人鬼を演じて第76回アカデミー主演女優賞を獲得した『モンスター』(03)と同様、今作でも際どい役に果敢に挑戦。ハローキティのTシャツをルーズに着て、10代の思い出を引きずったまま精神的に大人になりきれない女性を説得力十分に表現した。

 誰しもこのキャラほど極端ではないにせよ、ある程度は少年・少女の部分を内面に残し、元彼や元カノを懐かしく切なく思い出したりするもの。そんな感傷的な気分を刺激する本作は、哀愁、気まずさ、トホホな余韻など、人生のサエない部分も含めてすべてが愛おしいと思えてくる、変化球の人間賛歌だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』作品情報
<http://eiga.com/movie/57181/>

『ヤング≒アダルト』作品情報
<http://eiga.com/movie/57477/>

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

歴史的な悲劇から生まれた希望。

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最終更新:2013/09/09 15:42
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